2005/12/31「Dynamite!!」観戦記
友人と集まって年越しそばを食った後、一人さっさと抜けてやってきました大阪ドーム。
実に今年三度目! 生観戦も恒例となった感がある。
到着したのは3時半だったが、噂されたディーン・リスターのオープニングファイトは結局なかったのだろうか。
清原登場のオープニングと選手入場。ここまで試合順が不明だったのだが、この選手入場の順番がちゃんと試合順になっていて良かった。
今回の席は、9月の時よりも遠く角度もあり、おまけにビジョンも見にくい位置。端的に言ってイマイチなところだった。
まずは第一試合、アーツVS大山。
いきなりのあびせ蹴りから入る大山。対するアーツも猛然と打撃を返し、大山をぐらつかせる……が、潜り込んで足を取った大山が、そのまま足関節を極めてアーツタップ!
あああああ、まあ充分予想できた展開だけど、アーツは強引に足を抜けそうな局面で立たなかった。やっぱり対応できてないなあ。
続いて第二試合、バンナVSカラエフ。
生で見ると、カラエフはやはり物凄いデブだ。バンナは回りながら打撃を出して行くが、カラエフのガードが意外にも固い! パンチを振り回さずにタックルを狙って来る。そして案の定、バンナはサップ戦と同じく強引にマウントを奪われた! 会場はバンナ危うしモードに騒然。が、上になったカラエフも攻め手がなく、試合は膠着。バンナがスイープし、カラエフが再び上を取りかえしたところでブレイク。
だめだ、寝技はつまらんから打撃で行ってくれ……と誰もが思っていたところだろう。果たしてバンナはパンチで攻める……が、カラエフはガードを固めて前に出る。ここでバンナ、まさかの胴タックル……! え?と思った瞬間、潰されてマウントに! 何やってんだバンナあああ! 下手な事やってるんじゃないよおおお!
2ラウンドに入り、またもバンナがタックルを狙わないかヒヤヒヤしたが、カラエフは完全に失速。相変わらず顔面のガードは固い(これはルスランとのスパーの成果に違いない。そういうことにしよう)が、ボディーががら空き。そこを狙ってバンナはミドルキックを連発!
一発! 「オーイ!」 二発! 「オーイ!」 三発! 「オーイ!」
はっ……!? つられて無意識にやっていたが、なぜか大阪ドームがキック会場になっているぞ!? 左ミドルの連打にカラエフは悶絶! バンナ完勝。
やれやれ、ちょっと心配したが、勝って良かったぞよ。
第三試合は、中尾対ヒーリング。
これは結構楽しみな試合だった。リング上で睨み合う両者。中尾はいつもの顔を近付けての挑発。あ、ヒースが殴った。
……あれ? 中尾が倒れて……? え? 起き上がらないんですけど……?
お、おーい!? いったい何が起きたんだ! 観客席は唖然。中尾はピクリとも動かず。ヒーリングは興奮ぎみになにやらまくしたてている。5、6分は待ったと思うが、中尾はついに立ち上がらず担架。観客席はその間も唖然呆然。ここで角田登場。一旦控え室に戻って再試合が可能か検討するとのこと。花道を戻るヒーリングに観客が襲いかかったりして、不穏なムード。
この時点では何が起きたのかよくわからず。リプレイやれリプレイ! つっても試合じゃないからね……。
結局、この後も中尾の体力は回復せず、ヒーリングの反則負けが決定。中尾にも反則1が宣告された。
睨み合いの最中、中尾がキスしたのにヒーリングが怒って殴った、というのが後でわかったことである。色々な見方があると思うが、反則負けの裁定は妥当なところだろう。試合前に手を出してはいけない。だが、中尾の挑発行為も慎むべきことである。相手がルールに則って手を出してこないことを前提に挑発する……ルールを逆手にとった卑劣な行為であると言うしかない。パンチを受けた瞬間の中尾は、完全に無防備だった。殴ってくるとは全く思っていなかったのだろう。みっともないことこの上ない。
しかし、こんな奴らの試合に期待していた自分に、腹が立つな。
続いて、永田VSレミギウス。
なんとなく最初の睨み合いでレミーガが殴ってしまわないか、ハラハラした。いや、この二人はジェントルマンそのもので、そんな気配は微塵もなかったんだけど……。なんかトラウマになりそう。
レミーガは打撃勝負だが、永田のタックルが速い! さすがにこのウエイトのレスラーの動きはすごいね。レミーガも飛び膝で一発逆転を狙うが、クリーンヒットはなし。上を取り続けた永田が勝利。うーん、やはりレミーガの寝技はイマイチだ。
しかし、なんか前の試合のせいで流れが止まったような気がするなあ。
レミ−VSプレデター。
悪い予感は現実のものに……。やっぱ緊急オファーはダメだ。試合決定がもっとも遅かったレミー、この日の全選手の中で、曙の次に(笑)キレなし! 2004年決勝の延長2ラウンド目のようなハイキックを打っているう〜! 蹴りに破壊力がないせいか、プレデターがまったく失速せず、どんどんパンチを出して来るではないか!
後半、ようやく身体が温まってきたか、レミーがラッシュをかけるが、崩しきるには到らず。パンチはガードしてたし、キックはそこそこ当たってたから、まあ判定は取ったかと思ったけど、この試合はいただけない。入場の際の声援が、アーツ、バンナに劣らず大きかっただけに、残念。
セコンドにはおなじみのマナート会長もおらず、代わりに黒人……というかフランク・ライルズ。マナート会長は、急なオファーにわざわざ日本に来る事などせず、家族と年末を過ごす事を選んだのであろうか……。そして奥さんと子供も来ず、単身赴任状態のレミー、哀れ。
武蔵VSサップ。
フレーフレー、サップ! あまり猛然とは行かず、ラッシュとお見合いを交えてスタミナの浪費を避けるサップ。ここらへんはグレコ参謀の作戦通りだろう。でかいのが壁になって突っ立ってたら、小さい方は結構攻めあぐねるもんな。
なにせ自分からは行かない武蔵先生だから、このままの展開が続き、微妙な判定になるのかな……と思っていたのだが……そこは魔の第三試合の亡霊が、ここで再び蘇った。サップの圧力に押された武蔵が後ろを向いたところに、後頭部めがけてのハンマーパンチがダブルで炸裂! 武蔵失神!
あああ、やっちゃった。しかしサップはこれをこの期におよんでまだやるかね……何戦してるんだよ。しかしストップと思いきや、武蔵先生がゾンビのように立ち上がった。五分のインターバルを自ら三分に縮め、試合再開! マジ!? しかし復活直後の武蔵をビーストラッシュが飲み込む! またも失神した武蔵。反則のあとって、普通ちょっとぐらい遠慮するものだけど、サップは容赦なし。反則で2点減点があったものの、それもこのダウンで帳消しに。ビーストの卑劣な攻撃に、ついに塩帝も落日の時を迎えたか……と思ったのだが、なんとカウント9と10の妙に長い合間に武蔵がまたも亡霊のごとく立ち上がる!
ショックでデビュー当時にタイムスリップしたか、武蔵がミドルを連発しながら前に出る。野獣の巨体が気迫に押され後退する! そして左ミドルでボディを効かせて、パンチ連打でサップスタンディングダウン! いい攻撃だったけど、でもこれがダウンなら、去年のバンナ戦とセフォー戦のサップは、50回ずつダウンを取られていたと思うんだが……。
判定をもぎ取ったSIOの気迫は凄かったな。このムードは大晦日ならではか。やはりK−1を脅かす最大の悪はこの男だ。武蔵に力負け、という結果になったサップは、明らかにやばいよ。
魔裟斗VS大東。
相手が相手だけにこのカードもしょぼいが、魔裟斗登場で会場は大熱狂。いえーい。いや、オレも好きだから。試合はローの連打で圧勝! 他に書く事ないよ。
試合後のマイクで、2月のたまアリ出撃を明言。来年は働く、とも言ってのけ、期待が高まる。でもMAXの興行数はどうせそんなに多くないけど……。2月は王者とはやらないという話だから、レミギウス戦でいいんじゃないかな。
そして……今回のオレ的メインカード、シュルトVSホースト!
4本のベルトを掲げて入場するホースト。思えば、2003年の開幕戦で欠場して以来、オレがホーストの試合を生で見ることは一生ないんじゃないかと、常に危惧して来た。でも、夢は今日かなった! ビバ! Dynamite!!(かなり本気)
さて、相変わらず前蹴りとジャブを出しながら前に出て来るシュルト。気になるホースト先生の対策は……カウンターのストレートに、オーバーハンドフック、そして接近したら密着して防御。時折ボディストレートも出す。今までシュルトと闘った選手が出して来た対策を、すべて複合させたような感じだ。単調に見えるが、ホーストの技術をもってすれば、詰め将棋のごとくシュルトの攻撃を封じ込めるかもしれない。
シュルトはラッシュしきれず、やや膠着した展開が続く。2ラウンドもこの展開が続くか、と思ったのだが、その時は突然訪れた。シュルトの膝蹴りが、踏み込んだホーストの額を直撃! ホーストは束の間よろめき……そして力なく尻餅をついた。
今まで膝やキックで一度もダウンを取られたことがなかったホーストが、初めて味わう屈辱。やや出合い頭の不運な当たりで、なおかつ並の体格の選手なら顔まで上がって来る高さではないだけに、ホーストの試合勘をもってしても予期しきれなかったか。フラフラと立ち上がったホーストだが、額が割れており、ドクターストップ。あっけない幕切れだったが、フォータイムス・チャンピオンが新王者に惨敗した。仮にカットがなかったとしても、畳み掛けられていたらさらに大きなダメージを負っていたろうし、挽回の可能性は低かっただろう。シュルト恐るべし。
ところで、試合前は「偉大な王者」「素晴らしい選手」とホーストを持ち上げていたシュルトだが、勝った直後のインタビューでは「実はムカついてました」「ワンマッチも引退したら?」と毒全開。なんかちょっと嫌いになってきたぞ。来年こそは見てろよ!
ところで、テレビ放送のカットぶりは相当にひどかったらしい。生観戦した私は、実は勝ち組だったのか(笑)。中尾事件も見られたしなあ。
今回ひとつ感動した事。オレはいつもどおり一人で行って、ぶつぶつと独り言いいながら楽しんでいたのだが、斜め前の席に、女性の客が一人。
二十代前半ぐらいの大人しそうな女性だったが、この人も一人で来ていた。つるんで来ていたり、カップルなどで女性は多かったが、一人で来ているのはさすがに珍しい。しかも……ここは30000円のSRS席である。男のオレでも30000円注ぎ込んで一人で行くと言うと、半ば変人扱いされるのに、だ。一人だから当然大騒ぎもせず、時々立ち上がり、無言で拍手し、たまに手拍子し、膠着したら居眠りし……。実に淡々と楽しんでいる様子。
男同士で見る無骨なもの、ミーハー何人もで集まって好きな選手にキャーキャー騒ぐもの、そういう見方もありだろうが、本来、格闘技だけでなくスポーツ全般、映画や音楽などの芸術は、すべてその内容を問われるべきもので、それを鑑賞する側のスタイルは自由であるはずなのだ。主催する側が客層を限定して、楽しみ方を固定してしまっている方が貧しい。
若い女性が一人で、自分のお金で自分のスタイルで堂々と楽しめるイベント……芸術でありスポーツである格闘技のイベントが、そうした存在になりつつあることを実感して、感動した。件の女性は所とレミギウスのファンらしく、そこのとこだけ明らかに目の色が違った。拍手の力の入りようも違った。そういう楽しみ方も、無論ありだ。時代が変わったことを感じた。
アリーナ東の19列目、92番に座っていた貴女。貴女は素晴らしい。貴女のようなファンがいる限り、格闘技の未来は明るい。ずっと所とレミギウスのファンでいてください。
休憩が明けて、まずは矢沢永吉登場。コスプレした信者が大量に来ていて、笑った。つうか、マジ興味ないんでどうでもいいです。一曲だけだったのは良かった。余興と思えば別に腹も立たない。ところでこの人、なんでこんな変なしゃべり方するの?
さてさてお楽しみ、ボビーVS曙。
逃げ回りながら時々ローを狙うボビーに、スタミナが切れないようにゆっくり追いかける曙。曙がテイクダウン(!)を取ると、場内からは悲鳴とボビーコールが一斉に! いやはや、凄い人気だね。上を取った曙、ついに白星か、と思われたのだが、乗ってるだけで別に大した技もかかっていなかったようである。
2ラウンドも同じ展開、かと思いきや、終盤、倒れた曙に素早く立ち上がったボビーが襲いかかる! ここの盛り上がりは凄かったが、曙はゴングに救われた。つうか、ボビーはもっとこういう局面を作らなダメだよ。
3ラウンドは完全にガス欠の曙。2ラウンドが終わったら判定かと思っていた(笑)。あとはボビーが回りながらローを蹴るだけの展開。曙は動けなさ過ぎ。
判定はボビー。つまらん試合だったが、実力的にも対等で、まあまあ互角の戦いでしたね。オレとしては曙が強豪に伸ばされた方が面白かったんだが……。
セミは所VSホイス。もう毎年恒例、道着を脱ぐホイス。というか、総合における道着の存在意味っていったい……という感じになってきたな。もう単にファッションの世界じゃないか。崩して着たり、半袖を作ったり……。
オレはもっとギラギラした感じか、あるいは人を喰ったタイプの選手が好きで、そういう意味では好きなタイプではないのだが、所はやはりすごい! 少しでも隙があればとにかく勝負を仕掛けて行く姿勢は素晴らしい。攻め続ければ、やがては活路も開けるという戦いの基本の部分だろう。ただ、その所をもってしても下から抱えて何もさせてもらえない局面を作ったホイスも、熟練の技巧であった。
先のボビーコールに続き、ここでも所コールの大合唱。極めるかというとそういう雰囲気はなかったが、アグレッシブさだけで場内が大きく湧く。
20分闘って規定通りドロー。所は攻めきれなかったことを悔やんでいたが、殊勲のドローと言っていいだろう。秋山が出ていたら、これほど盛り上がったかどうか。
そして、いよいよメイン。KIDVS須藤!
先に入場したのはKID。いや、さすがに大したオーラで、見た目からして気合い充分。調子も良さそうで、悠々と入場。
続いて、須藤の入場。ピロピロとノリのいい曲がかかり、着物姿のダンサーが大挙して登場! そして、メインゲートからセグウェイに乗った覆面の男が、黒子と共に登場し……いやね、今まで須藤の入場シーンをテレビで見ては、さしたる感想もなく「ああ、やってるねえ」と思っていたのですよ。今回も、人数は増えてますけど、特別なことをやってるわけじゃないのね。いつもと変わらんのですよ。しかし……なぜか……気がついたらノリノリで手拍子してしまっていた!
パンパンパンパン……衣装が取り払われ、須藤登場! 大歓声! オレも歓声! あの手を回すポーズを一緒にやりました! 須藤の入場って最高! いやあ、これが生の醍醐味ですねえ。須藤の人気の理由が、ちょっとわかったような気がしたなあ。ノリノリのまま、チラとリングを見遣ると……KIDもノリノリでシャドーをやってるよ! リングインした須藤と、束の間、一緒に踊った後、グローブを合わせる! ここでオレの興奮は最高潮。このシーンこそがこの二大カリスマのキャラクターを全て象徴していたね。ありがとう須藤! ありがとうKID! 一生の思い出になりました!
あ、そうそう試合ですが(笑)。なんかオレの中で、あとは単なる結果にすぎなかった感じですね。映画見てるような、シナリオ通りに主人公が勝った感じですよ。KIDが主役だったという意味じゃなくて(そう捉えてもいいけど)、「すべては必然」という須藤の言葉のとおりですね。今夜はこうだった、というだけで、須藤の価値はなにも下がりはしないよ。
やはりスタンド中心の組み立てで、浅くだがKIDのパンチが当たる瞬間が目立っていた。この展開が続けば、いつか一発が当たるな……と思っていたら案の定。ストップが早いようにも思えたが、リプレイを見ればラストから二発目のパウンドでグタッと須藤の身体から力が抜けているのが見てとれる。続けてもいいけど、止めてもいいという感じかな。これがHEROSルールだということですよ。追い打ちのパウンドへの対応を早くする、スタンドでのテクニックを磨くなど、対応策はまだまだあるだろう。
つまらない試合も多かったものの、私的には満足。五時間ほとんど退屈しなかったぞ。昨年は魔裟斗VSKID以外はパッとしなかったが、今回は勝敗の面でも良くも悪くも起伏のある展開が続き、そこそこ楽しめるイベントに仕上がっていたと思う。去年、私の精神状態があまり良くなかったことを割り引いても、ずいぶんと良くなっていた。
……しかし、こうやって生で観たから笑ってられますが……テレビは相当やばかったみたいですね。視聴率もPRIDEを下回ったみたいですし。おかしいな、去年は宇野の試合以外は入っていたと思うんだが、なんでこんなにカットされてるんでしょう。ボビーと所が長過ぎた? ざっとよその感想を見ても、テレビ観戦組はPRIDEオタの冷笑と、K−1ファン(特にWGP好きな人)の怒号ばかり。アーツ惨敗、バンナ激勝、ヒースマジギレ、ホースト陥落を挟むと、全然印象が違うんだが。これほどまでに色々な意味で生観戦して良かったと思った事はない。オレもテレビで見てたらプッツンして、今頃なにを書いていたことやら(笑)。地上波組の皆さん、お気の毒様です! やはり当日にPPVなり有料チャンネルなりで、生放送を見られる手段は確保しておいてほしいところですね。
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