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観戦記 過去ログ K-1WGP編

2006/9/30 K−1WGP開幕戦 観戦記

大阪は今日の気温も30度近く。残暑の厳しい日が続いております。自転車を飛ばして、今日も行ってきました大阪城ホール。
昔、ワールド・オン・アイスを見に行った時以来、ということですが、全然記憶と違ったなあ。こんなに小さかっただろうか……。

20分ほど押して入場。うーん、さすがに大阪ドームと比べると見劣りするなあ。パンフレット買って席でぼんやり。しかしSRS席の17列目ということだが、距離的にも角度的にも2003年にドームで座ったとこと同じぐらいのランク。しかし、会場は小さくなってるんだから、ちょっとぐらい前に行ってくれんもんかね? いささか釈然としない。

オープニングファイトは、野田貢VS長谷川康也。長谷川はすごい腹ですよ。試合は野田が膝とパンチをガンガン当て、圧勝。二度目のダウンを取ったフックはきれいだったなあ。長谷川は自分のジムでは無敵なんでしょうが、あの体格では……ちょっとレベルが違った感じ。

続いてオープニングイベント。全選手入場! この入場口がすぐ後ろで、選手が良く見えて良かったなあ……ってオレの席はどんだけ後ろなんだよ! ここでバンナ登場……本気で安心したよ。
子供演舞の後、いよいよ試合開始!

<第1試合 GP1回戦 3分3R延長1R>
ルスラン・カラエフ(ロシア/マルプロジム)
バダ・ハリ(オランダ/ショータイム)

で、出た、これが長いと評判悪いバダ・ハリの入場か。入場曲を口ずさみながら、花道で延々とパフォーマンスし続ける! 次に入場したカラエフが、えらくあっさり入ったように見えたぜ。
さて試合開始、バダ・ハリ、前蹴りでカラエフの踏み込みを止めると、シャープなローキックを打ち込む。小気味良い音が会場内に響き、カラエフは早くも身体が流れる。予想通りの作戦か。当然カラエフは距離を詰めて強引に仕掛けるだろうし、ここを凌げばハリのペースか……と思いきや、コーナー際の攻撃でハリが尻餅、ダウン! なぜか完全に効いてるようで、10カウント以内に立ち上がれず。なんだ?
VTRを見ると……うーん? ダウン後のローキックが入ったか? ハリは試合後も収まらない様子でなかなか引き上げようとしない。
非常に後味の悪い結末。ハリはダウン後の加撃に怒ってるのかと思ったが、帰って見てみたら肘も入ってる模様。いや、故意ではないとはいえ、これはひどい反則だ。その前のパンチだけなら、有効打であるにしてもKOには到らなかっただろうし、バダ・ハリも怒るだろう。
正しいレフェリングは、回復を待って再開だったのだろうが……ダウンをコールしてしまってはなあ。要は肘が当たったのがわからなかったということか。なんかこれは後を引きそうな感じ。


<第2試合 GP1回戦 3分3R延長1R>
ゲーリー・グッドリッジ(トリニダード・トバゴ/フリー)
レミー・ボンヤスキー(オランダ/チームボンヤスキー)

さてさて、アーツ欠場で勝って当然というムードのレミー。これは結構プレッシャーかも。しかし序盤、ゲーリーのボディを凌いだレミー、ひさびさ、本当にひさびさのフライングニー直撃! お帰り! まあその後はいつもの下がってしまうレミーに戻ってしまったわけですが、しかしこの膝も試合止めてもいいぐらいの強烈な一発であった。
2ラウンド、やや様子見してしまったレミーだが、地味にローとミドルは効いていた模様。3ラウンド、ダメージ手は出ないまでも前に出てくるゲーリーに、パンチのコンビネーションから膝、さらにパンチからハイキックで追い打ち! 膝が効いていた様子のゲーリー、前のめりに崩れ落ち、ビジョンに目をやると……血が噴き出しているう! ここで試合終了。
いやはや、アーツとだったらどうだったかは皆目わからないものの、怪鳥の殺人技は完全復活! 凄まじい攻撃力を見せつけた。


<第3試合 GP1回戦 3分3R延長1R>
グラウベ・フェイトーザ(ブラジル/極真空手)
ポール・スロウィンスキー(オーストラリア/ファインダーズユニムエタイジム)

これも注目の一戦。お互いあまり間合いを取らず、延々と蹴りの届く距離で戦い続ける、見てるだけで痛くなる神経戦に。グラウベのミドルとポールのロー、グラウベの一発狙いのフックとポールのコンビネーションが交錯する。だが、リーチと破壊力に勝るグラウベが、強打を叩き込んで優勢。決め切れなかったものの、コーナーまで押し込む場面も幾度か作り、磐石の勝利。ポールはちょっと真正直に行き過ぎたか? 正対して戦うスタイルだから仕方ないが、こういう相手には少し戦法を変える必要があるのかも。


<第4試合 GP1回戦 3分3R延長1R>
セーム・シュルト(オランダ/正道会館)
ビヨン・ブレギー(スイス/マイクスジム)

ここまで波乱なし……番狂わせがあるとすればここかと想像してたのだが……。
おなじみ前蹴りを飛ばすシュルトだが、ブレギーは強引に距離を詰めてフックを狙う。シュルトは後退しながらかわすが、ブレギーは距離を詰め続け、一発二発とヒットさせる。これは、と思った直後、ブレギーの左に合わせ、カウンターでシュルトの左ジャブが直撃! 身長差があるのでブレギーはショルダーブロックも出来ず、まともに食らってダウン! クロスとはいえ、まさか何でもない左ジャブで……。
レンガパンチ恐るべし、シュルトはなおもジャブを連打し、ブレギーを圧倒。あっさりと試合を決めた。
いやあ、ブレギーがもう少し肉薄するかと思ったのだが……。いかにアーツがすごいかがよく分かるな。


<第5試合 GP1回戦 3分3R延長1R>
レイ・セフォー(ニュージーランド/レイ・セフォーファイトアカデミー)
ステファン“ブリッツ”レコ(ドイツ/ゴールデングローリー)

さて、慎重な立ち上がりを見せる両者。レコは距離を取ってローキック、ピシイッという鋭い音が響く。セフォーも得意のノーモーションの右ローで応戦。お互いなかなか手を出さず、ローの攻防に終始。ただ、プレッシャーを掛けているのはレコで、セフォーはカウンター狙いか。レコはプレッシャーを掛けていい立ち位置をキープするが、そこからのパンチ勝負には出ない。距離が詰まるとプッシングで距離を取る……これがうまい。ホーストみたい。予想では、ここでセフォーが前に出ると思っていたのだが、なぜか終始カウンター狙い。前に出てかわされ、スタミナを消耗するのを怖れたか? ただ、判定にもつれこんだ時点で、命取りになったのはこの消極的さではなかったか。
倒す姿勢が見えなかったのはお互い様だが、セフォーは省エネファイトが見透かされていた印象。パンチで攻勢点をもぎ取る戦い方をなぜしなかったのか? スタミナに不安があったか、プレッシャーに負けたか。ノーガードも挑発もほとんどなかったのが、余裕のなさの現れだったのかも知れない。仕掛けずに試合をリードしたレコのクレバーさが光った。

ここで休憩、15分。いやあ、KOあり、神経戦ありで進行は早いながらもうグッタリ。アリーナはざっと満員、スタンドは8割ぐらいの入りか? 城ホールでこれではちと寂しいかな。しかし、なんというか回りの客のお行儀がいいですね〜。左右の隣は、オレと同じく一人で来てるマニア。イベントノリで来てる奴がいなくて、みんな真剣に試合見てる感じ。良かったですわ。

休憩明けに、マイク・ベルナルド引退セレモニー。テンカウントゴング、花束贈呈。寂しさを振払うように陽気に入場したベルナルドだったが、最後は声を詰まらせていた。
彼の試合は2003年イグナショフ戦しか、生で見る機会はなかった。選手生活末期は「番狂わせ」される方というポジションが定着してしまっていたが、全盛期の強さは圧倒的であった。
お疲れ様でした! しかし今日、会場が一番沸いたのもこの時だったような……。

<第6試合 GP1回戦 3分3R延長1R>
アーネスト・ホースト(オランダ/チームミスターパーフェクト)
藤本祐介(日本/モンスターファクトリー)

さて、今日唯一の消化試合、と思っていたのだが……。
ホーストのバランスが悪い! レバーブローは遅くて顔面へのフックを合わせられるし、パンチは空振り、ローを蹴った後で態勢を崩す! 構えからして、後ろにのけぞって尻餅をつくシーンは全盛期にもあったが、今日は左右のバランスまでもが悪い。藤本のパンチが結構当たっている。
まさか……まさか……あのホーストが日本人に初白星を献上して引退? 藤本は今日は珍しく積極的に手を出しており、パンチが冴えている。これはひょっとして……と思っていたのだが、やはり所詮は藤本だった。2ラウンドから藤本のバランスまでもがグラグラになり……完全にローキックが効いてしまっていた。踏み込んでパンチ打ってるから、全然カット出来てなかったのね。
3ラウンド、パンチを振るった藤本に対し、ローを合わせたホースト、二人同時に倒れ込む。今日の二人の出来を象徴したようなシーンだったが、結果はやはり実力差を如実に示していた。藤本は完全に脚が効いて立ち上がれず。ホーストのKO勝利って、何年ぶりっすか?
しかしやはり藤本は出場選手の中で、一枚も二枚も下だった。結局、ここ二年ハワイ、ソウルとろくにローも蹴られない選手とばかり対戦していたつけが、大きくきてしまったわけだ。


<第7試合 GP1回戦 3分3R延長1R>
武蔵(日本/正道会館)
ハリッド“ディ・ファウスト”(ドイツ/ゴールデングローリー)

さて、カード的、勝負論的にはかなり興味の薄い試合……のはずなんだが……もっとも入れ込んで見る事になるのはこの試合であろう、というのも最初からわかっていたことであった。しかし、前日あんな予想を立てておきながらも、「日本人のいない」ベスト8、「武蔵のいない」東京ドームというのが、あり得るはずがないとも、心のどこかで思っていた。だが、それでも思考実験として私は、武蔵に「ダウンを奪う事なく判定で勝つ」にはどうすればいいか、を必死に考えていたのである。

前提条件
武蔵を上回るパンチのテクニックと、対等以上のスピードがあること。

まずは最低でもこれが前提だ。昨年のボタ、一昨年のアビディはスピードで遅れを取り、なおかつパンチもワンツー以上のものが出せなかった。昨年決勝のカラエフ、そして今回戦うハリッドは、この条件を満たしている、と言える。しかしカラエフは結果として敗れた。彼の捨て台詞はこうだ。

「判定では勝てないのはわかっていた」

そうなのかもしれない。だが、どこかに突破口があるはずだ。そう信じなければやってられないではないか。

勝負の鍵を握るのは第一ラウンドである。
昨年、カラエフはここからエンジン全開で攻めた。武蔵はローで応戦。
おおまかな印象だが、

カラエフ……手数10 ダメージ5
武蔵……手数5 ダメージ4

というところだった。普通に考えれば、ポイントはカラエフのものとなる。だが、これがもしイーブンと取られたらどうなるだろう?
次のラウンドが仮に、

カラエフ……手数8 ダメージ5
武蔵……手数5 ダメージ5

だったとした場合……「手数の減った」カラエフが逆にポイントを奪われるということになる。絶対的に見ればカラエフが押しているにも関わらず、一ラウンドとの相対的な差で武蔵にポイントがついてしまうのだ。
カラエフが二ラウンド以降にポイントを取ろうとしたら、

カラエフ……手数12 ダメージ6
武蔵……手数5 ダメージ5

これぐらいは攻めないと、一ラウンドのイーブンというジャッジを崩せないことになる。
結果として、圧倒的な手数をまとめたはずのカラエフは、武蔵に敗れ去った。

武蔵の弱点は手数……もはや周知の事実だが、その弱点がこういう形でスポイルされていては、勝つ術など見当たらない。
が、第一ラウンドに実は大きな勝機が隠されているのである。それは、「あえて手数を出さない」ことだ。
最初のラウンドを、

ハリッド……手数5 ダメージ2
武蔵……手数5 ダメージ2

とにかく消極的に立ち回り、攻撃は牽制程度に止め、「様子見」をしているふりをするのである。消極的なのは元からの武蔵も当然、様子見に徹してくるだろう。だが、これがトラップなのである。

手数が同じでもダメージがなく、あくまでお互い「様子見に徹した」という印象をジャッジに植え付け、このラウンドをイーブンと採点させるのが、この作戦の最大のポイントである。上記のカラエフ戦の論法ならば武蔵にポイントを与える理屈になるが、本来積極性をアピールすべきところで消極姿勢を見せ、武蔵の待ちの戦法を過大に採点させない布石を打っておくのである。

そして第二ラウンド以降、温存しておいた手数を爆発させる。

ハリッド……手数8 ダメージ6
武蔵……手数5 ダメージ4

「本来のジャッジ」ならば、これぐらいでも当然イーブンにつけるところだ。だが、第一ラウンドで「同じ手数」のところをイーブンにつけてしまったことが、ジャッジを縛る。K−1は曲がりなりにも、ラウンドごとの採点を公開している。お互い動きのなかった内容の第一ラウンドをイーブンにつけておきながら、次のラウンドで明らかに一方に流れが傾いた展開を同じくイーブンにつける……後から採点表を振り返ればどう思われるか? ジャッジはバランスを考え……手数で勝る方にポイントを与えざるを得なくなる!

手数やダメージの数値はあくまでイメージだが、なんとなくご理解いただけたろうか? 試合を振り返るに……ゴールデン・グローリーの首脳陣が、深く意識してではないにしろ、このジャッジングのパターンを考慮していたのは間違いないのではなかろうか?

果たして、第一ラウンドはさほど手数を出さなかったハリッドは、2ラウンド以降、蹴りも交えて勝負を賭ける。チェンジ・オブ・ペースと合わせて今回徹底されていたもう一つの作戦……それは左方向へのステップワークだ。常に左へ左へと回りながら、小刻みにパンチを打ち込む。武蔵のガードの空いた隙を狙ってパンチを入れ込むと同時に左へ回り、武蔵最大の武器である左の蹴りの威力を減殺させるのだ。正面から行けばロー、ミドル、膝を浴び、ボディにダメージを蓄積される。カラエフはこのダメージでポイントを取られた。だが、左に回り続けて攻撃を殺せば、スタミナと精神力に優れたハリッドに、決定的なダメージを与えることはできない。谷Pが「ミドル、ミドル」と言っていたが……出してもヒットする位置にハリッドがいないのではどうしようもない。それでもローは幾度か当てたが、動きを止めるには到らない。カウンターで蹴りをもらう危険性が減れば、思い切ってパンチのコンビネーションも打ち込める。フック、アッパー……パンチが面白いように顔面を捉えだす。
武蔵も逆に正面から右寄りの位置に行こうとする素振りを見せたのだが、ハリッドの動きが早く追い付けない。武蔵のリングネームの由来はサウスポーとオーソドックス、どちらも使える「二刀流」から来ているはずだったが、オーソドックスにスイッチしたのは一瞬だけだった。練習していなかったのだろう……。

ハリッドのスピード、手数を止めないスタミナと、一発やそこらではひるまない精神力、フックとアッパーを使い分けガードの隙間にねじ込むパンチのテクニック、それら全てが揃ってこその完璧な作戦である。クリンチ、背中、スリップダウン……最終ラウンド、ついに武蔵が醜態をさらす。なんだかんだと言って安定感を増していた近年、ここまでの劣勢に追い込まれたことはなかったのではなかろうか。圧力に負けイエローをもらったシュルト戦、ダウンを取られたグラウベ戦以上に、内容の差が見せつけられる。
真正面から手数で勝負を賭けてくるカラエフが、武蔵に取ってリスクの大きい相手だったことを、昨年の決勝大会から首脳陣は理解していなかったのだろうか。スタイルが似ていて、バス・ブーンの頭脳までが加わったハリッドがそれ以上に危険な相手だということも想像できなかったのだろう。

勝負は判定へ。
いやしかし、それでもメチャメチャハラハラしたね。完全に武蔵が効いてたのはわかってたんだが、それでももしやと思うと……。一人目は30対29でハリッド。当然! 場内も大歓声。続いて28対29で……なんと武蔵! ここで上がった「えええ〜!」という叫び声の大きさ! 聞け、首脳陣よ、これがファンの声だ! それでもいやな予感が黒雲のようにわき上がる。2004年決勝……拳を上げたセフォー、黙って立ち尽くしたガオグライ、そして2度に渡る延長の判定に一度は目を剥き、もう一度は怒りを押し殺すようにしていたレミーの顔が、走馬灯のように僕の脳裏を掠めた……。運命の瞬間。
そして最後の一者は、

「30対29……………青、ハリッド!」

うおおおおーっ! もちろんオレも大拍手!
おめでとう、ハリッド! 見事な戦いでした! 判定で武蔵を破る……これがいかに至難の技か、K−1ファンなら身にしみてご存じだろう。

仮に延長だったとしても、武蔵に勝機はなかっただろう。判定を待つ二人には、それほどの差があった。武蔵に勝機があったとすれば、それは2004年セフォー戦のように、下がって下がって下がりまくることだったろう。パンチのダメージを最小限に止め、ミドルレンジをキープすることだ。だが、この日のハリッドのスピードと切れから距離を取り切れたか、そしてワンツースリーフォーとつなげてくる連打へのディフェンスの途端なお粗末さを見ても、厳しかったかもしれない。それでも、決して前に出るべきではなかった。

東京ドーム、ベスト8の常連となり、周囲の期待も大きくなった中で迎えた、初めて予選から上がってきた相手。武蔵にあったのは、勝って当たり前という期待に応えようとする責任感よりも、自分は強い、日本人は外国人選手とも互角に戦える、という「格下」に対する慢心ではなかったか。その慢心が彼に「弱者の戦略」を忘れさせ、かかる結果を招いた。己の戦い方を貫けぬ者に勝利などない。たとえそれが、どんなにくだらない戦い方であってもだ……。

もう一つ付け加えるとすれば、「金持ち」で戦いを「趣味」としているハリッドに、「貧乏」で戦いを「人生」の中心と位置づけるハングリーな武蔵が挑む、という構図が盛んにアピールされていたこと。実際には、K−1という世界の中で優遇され、贔屓されていた武蔵に対し、アビディやライティ、カーターなどに敗北しながら何度も予選から挑み続けてきたハリッドのハングリーさが上回ったという、文字どおりの結果でしかない、ということだ。

しかし何と言うか……勝利に沸き返るハリッドとゴールデングローリーを見た時に感じたものには……一抹の寂しさも含まれていた。一つの戦いが終わったことに対する、なんとも言えない寂寞感。今までヤオ判定に血圧を上げ続けた日々が、なぜか懐かしく感じられるような……。ありがとう、そして、さようなら武蔵……。

シュルト
「SIOにはみんなが貸していたのだよ。10年前から大勢の人間が……あらゆるものを貸していたのだ」

ハリッド
「戻って来ねえものが……多すぎるがな……」

シュルト
「ああ多すぎるな……そして大きすぎる……わしらの失ったものはこの地球にも匹敵するほど大きい…しかし…彼らのおかげだ…彼らのおかげでわしらは勝っているのじゃ…」

「佐竹! ガオグライ! アーツ! 終わったよ…」

……というわけで、日本一長い武蔵VSハリッド分析でした。笑って読んでいただければ幸いです。

SIO陥落の余韻に浸る間もなく、メインイベントが始まる。
映画撮影によって欠場の噂が出ていたバンナだが、来日は当日の朝。明らかな異常事態に、こちらもストレスが頂点に達していた。選手が当日セレモニーに出て、初めてホッとする……ってなんなんだ?
そんなこちらの心配をよそに、バンナは身体も絞り、やけにすっきりと男前。完全に映画モードだよ……!

<第8試合 GP1回戦 3分3R延長1R>
ジェロム・レ・バンナ(フランス/レ・バンナエクストリームチーム)
チェ・ホンマン(韓国/フリー)

まあ正直、いくら煽ってもKOは難しいかな、と思っていた。倒すならローか?とも考えたが……。バンナは細かいフェイントを交えて攻撃の隙をうかがうが、ホンマンは相変わらず見る構えで、誘いに乗らない。ならばとローとミドルを振っていくバンナ。ホンマンはカウンター狙いでパンチを振るうが、バンナは動きが切れており、頭を振ってかわす。時折飛び込んでパンチを当てるバンナだが、ホンマンのパンチと膝のプレッシャーが強く、連打を狙えない。
まあ試合展開を言うと、延長が終わるまではずーっとこの繰り返しで、山が作れなかった。ホンマンが出てくれば展開も変わったろうが、出続けるスタミナはないのだろうなあ。悪い意味で勝つための戦略にこだわり、逆にテクニシャンには決定打を与えられずに敗れるというスタイル。ただ、バンナ、ボンヤスキー、グラウベなどなら難なくローキックを当て続けるだろうが、それ以外の選手ではなかなか厳しいかも……。
面白い試合ではなかったが、最後は蹴りの有効打に勝ったバンナが制した。健闘を称え合う二人……なんというか、良くも悪くも殺伐としたところのない今のK−1を象徴したシーンであったな。逆にバダ・ハリみたいなリアルに危険な人は浮いてしまう。だからこそ、逆に彼のような存在が求められるのだろう。ただ、そういう危険な人がルール内で強いかというとそうでもないわけで……。

終了後は、勝ち上がった8人がリングに集結し、それぞれ挨拶。この時、会場の隅でポール・スロウィンスキーがその様子を見ていた。すぐにファンの写真攻めに合ってしまっていたが、心中にはどんな想いが去来していたのであろうか。来年は、あの8人に入れるように頑張ってくれ!

この時、バンナさんが「契約に関する問題をクリアにしてくれた」ある人物に感謝の言葉を述べていた。
詳細は、こちらを御覧頂きたい。

http://blog.goo.ne.jp/chaser34/e/175a11d7b551db730d424bbc4693cab4

ありがとう、アラン・ドロン!
大げさかもしれませんが、K−1はこれで救われました。

さて、番狂わせもありつつ、トップ陣も順当に強さを見せつけ、全体的にいい雰囲気の興行だったと思う。バダ・ハリの件は遺恨が残るかもしれないが……。
ただ、客入りという点では寂しかったし、視聴率も昨年の開幕戦より落ちているとのこと。ハリッドが初めてドームに勝ち上がったが、まだ新スター誕生とは言いがたいし、決勝大会も実力者が揃ったとはいえ、客の呼べる面子とは言えないだろう。格闘技界に吹く逆風は、まだ収まってはいない。今後も厳しい状況は続くだろう。
ただ、直接イベントを見に来れない遥か海外にも、K−1、ひいては日本の格闘技界に期待している人はまだまだ大勢いる。先のアラン・ドロンがいい例だ。
そういう人々に応えるためにも、今後も襟を正したイベント運営を行ってもらいたい。

ハリッド勝利の祝杯をあげようかと思ったのだが、疲れて頭が痛かったのでやめた。
さて、東京ドーム展望は、次の抽選会の記事で。
2005/9/23 Kー1WGP開幕戦 観戦記

その時、歴史は動かなかった!

さて、今年二度目の大阪ドームである。今回はオープニングファイトがあるということで、2時50分頃に会場入りした。大阪は残暑がやや厳しいが、今日も格闘技日和であった。
パンフレットとイグナショフTシャツを購入後、座して試合開始を待つ。そうそう、SRSの特典のポストカードセットももらった。しかしイグナショフの写真は今年のパリ大会のもので、イマイチだった。
13列目ということで、ちょうど前から二ブロック目の一番前。二年前の開幕戦の時はえらく角度があったのだが、今回は完璧である。

そうこう言ってるうちにオープニングファイトが始まった。

オープニングファイト
アレクサンダー・ピチュクノフ
ラニ・ベルバーチ

極真第四の怪物が、ついにKー1参戦。「一撃」でグローブマッチを何戦か経験しているも、実力は未知数。だが、開始早々切れのある蹴りを放ち、ベルバーチを圧倒する。前蹴りやローで距離を取り、時折トリッキーな回転蹴りも放つ。上のガードもしっかり固め、ベルバーチのパンチをブロックする。一ラウンド、二ラウンドとラッシュをかけ、ポイントでは優勢にたった印象。しかし、このベルバーチという選手、ダブダブの腹の癖にしぶとく粘り、ボディブローと強引なハイキックでピチュクノフを失速させる。逆に攻勢にでて三ラウンド終了。
判定でピチュクノフだったが、インパクトを残す内容ではなかった。

ここでホースト先生が登場。試合に出られなくなったお詫びと、今の気持ちとしてはトーナメントは引退ということを、淡々と告げる。本当に残念だったけど、でも来てくれて良かった。
子供演武のあと、全選手が入場。第二試合のガオグライが、ウォーミングアップ中なのか、すでに裸。しかし一昨年はキャンペーンガール?が先導してたんだけど、今回は正道会館のちびっ子である。けちってるんだろうかなあ。

そして注目の第1試合である。
第1試合
角田信朗(日本/正道会館)
ジョージ・“ザ・アイアン・ライオン”(オーストラリア/スタン・ザ・マン・ジム)

さて、アイアンライオン入場……おお、ほんとに弟だ! 顔がそっくりだよ。試合が始まったら、前傾姿勢を取りグローブを高めにあげる……こ、これはスタン・ザ・マンと同じ構え! なんかパンパンに筋肉が詰まった感じの選手で、一発がありそうだ。が、それほど攻めるでもなく距離を取ってのローに終始。ムエタイっぽいディフェンスのせいか、角田は踏みこめない。ローからパンチにつなげ、角田のパンチはなり振り構わぬ大袈裟なダッキングでかわすアイアンライオン。第二ラウンド、リーチ差で勝ったパンチが角田をマットに叩きふせる。
その後、三ラウンドに巻き返しをはかった角田だが、ワンダウンのポイントは覆せず、判定負け。勝ったアイアンライオンも完全にスタミナ切れ。自軍コーナーに戻る時に手をあげようとしたら、トレーナーがそれを払い落とした。不甲斐ない試合に怒っているのだろう、厳しいトレーナーだな……って、よく見たらスタン・ザ・マンだよ!
まさかスタンを生で見られるとは思わなかった。彼やグレコが今や立派なトレーナーなんだから、オールドファンは長く見てきた甲斐があるというものである。

この時点でざっと会場を見回してみると、アリーナは綺麗に埋まってる感じ。スタンドには空席が目立つ。一昨年よりは多いと思うが、せいぜい4万人ぐらいかなあ。

第2試合
レイ・セフォー(ニュージーランド/レイ・セフォー・ファイトアカデミー/昨年ベスト8)
ガオグライ・ゲーンノラシン(タイ/伊原道場/昨年3位)

パンフレットを読むと、セフォーはソウル大会での張慶軍の戦いを高く評価していて、あのプレッシャーのかけ方がヒントになると言っている。果たして、すぐにプレッシャーをかけていくセフォー。いつもより早くノーガードに切り替え、ガオグライは軽い蹴りを出しながら周りを回る。セフォーはハイ、ロー、フックとやや強引に振っていき、いかにも攻撃しているという印象を見せる。敢えて遠目から出す事で、ガオグライのカウンターを封じているか?
挑発を繰り返すセフォーの動きは、いつにも増してトリッキー。パフォーマンスよりも攻撃のバリエーションに目が行く。ガオグライはかけ逃げが増え、蹴った後にわざとスリップするのか露骨になっていく。そして、ついに躱しぎわにセフォーのフックがヒット! 体勢を崩しかけていたガオグライは膝を突き、ダウンを宣告される。
ダメージはあまりなさげで、すぐに立ち上がってアピールするが、ダウンはダウン。戦法の裏を突かれたか? ダメージがないのを承知か、セフォーもラッシュをかけず、2ラウンド終了。
こうなれば、ガオグライにポイントを取りかえす術はない。それでも後の攻撃は躱し続けるが、一度セフォーが空振りした後に、大きくスウェーを繰り返すシーンがあった。ここで勝負あったという感じ。攻撃がないのにあらかじめ身体を振るということは、つまり読めていないということだろう。
セフォーの貫禄勝ちという印象だった。番狂わせは起きず。だが、この流れが最後までかわらないことには、この時点では気付くよしもなかったのだ……。

第3試合
リカルド・ノードストランド(スウェーデン/ヴァレンテュナ・ボクシング・キャンプ)
ルスラン・カラエフ(ロシア/マルプロジム/GP最終予選優勝)

武蔵には塩漬けにされたノードストランド、どんなファイトスタイルかよくわからなかったが、カラエフの猛攻を受けての反撃でそれが明らかになる。組んでの膝で攻撃を止め、離れ際のパンチラッシュにつなげるスタイル。なるほど、ホルムやクルトと同じスタイルだ。組み止めてからの膝とローが強く、ローブローもあってカラエフの脚が流れる。
終盤、踏んばりが効かなくなったカラエフは動きが鈍り、三ラウンド終了間際に顔面に膝を浴び危ない場面も。
手数でカラエフが上回り、どうやら判定は押さえた。
ここでも下馬評通りか。

第4試合
セーム・シュルト(オランダ/正道会館/ヨーロッパGP優勝)
グラウベ・フェイトーザ(ブラジル/極真会館/USA GP優勝)

開始早々、単調ながら猛攻撃を繰り出すシュルト。前蹴り、ジャブ、膝でグラウベを容赦なく叩き続ける。グラウベもパンチを返すのだが、まったく届かない。ロープ際に詰められ、なす術なく攻撃を浴びる。
二ラウンド、それがさらに顕著に。シュルトはパンチにボディブローも交え、これが効いたかグラウベは身体を丸め、ローにも脚が流れるようになる。三ラウンドになって、後がないグラウベはやみくもにパンチを振り、ついにブラジリアンキックを顔面に当てる。が、当たりが浅く決定打にはならない。上から打ち下ろすはずのハイも、シュルトの身長の前ではただのハイと変わらない。
ダメージは大きく、判定でシュルト圧勝。グラウベは一度も突破口を開けず。勝つためのプランがあるようには見えなかった。

第5試合
レミー・ボンヤスキー(オランダ/メジロジム/昨年優勝)
アレクセイ・イグナショフ(ベラルーシ/チヌックジム/昨年ベスト16)

昨日、会社の同僚(女性)と話していた時のこと。

「あの人(イグナショフ)って、葉っぱが友達やねんやろ? あんまり強くないよな。葉っぱとばっかり練習してるから、人間には本気になられへんのかな」

……世間の認知なんてこんなものだ。その後、葉っぱだけじゃなくてキノコも好きだとか、あの逆三角じゃないいまいちカッコ良くない体型は、プロテインや薬物に頼らない自然なボディであることを滔々と説明した。

「でも、あの人、なんかいいよな。その話聞いて、ますます好きになったわ」

それは良かった。さて、そんなファンの期待を一身に背負い、我らがイグナショフは入場する。前日のインタビューやパンフレットのコメントなどを見ると、ファンのためにいい試合をしたい、と、えらく意気込んでいる。心なしか入場時の表情は厳しく、足取りは早い。
さて、気になるボディの状態は……おお、痩せているではないか。後ろの方の席から、

「痩せてるぞ!」
「これなら期待できる」

という声が聴こえる。どこにでも同志はいるものだ。しかしなで肩からは、なんとなく力が感じられない。

煽りVは奥さんも美人で絶好調のボンヤスキーに、大スランプ男イグナショフが挑むという、勝ち組と負け組の構図。余計なお世話だ! 一瞬、今までボンヤスキーに対して「いいなあ」と思っていた自分に気付き、猛烈に腹がたった。

先手を取ったのはイグ。パンチで距離を詰め、ボディを叩き付ける。レミーは警戒しているのか、いささか動きが固い。だが、対するイグナショフも蹴りが出ない。おいおい、ほんとに治ってるの?と思ってたら、ローが出た、続いてミドル、そして膝! 出た! パリは無しだったから、実に1年ぶりにイグナショフの膝を見たことになる。立った状態から軽く組んで顔面狙いの膝。ボンヤスキーはガードしたが、これはかなりのプレッシャーだろう。
だが、内田戦とは比べ物にならないながら、やはり蹴りは本来の走り方ではない。
一ラウンドは様子見のレミーに対し、やや手数で上回ったか。
二ラウンド、レミーはローキックを増やし、わずかながらピッチを上げる。イグナショフも変わらぬコンビネーションで対抗。ちょっとローを受け過ぎなイグナショフだが、効いた素振りは見せない。鞭のようなローだが、当てる事優先でさほど威力はないのか。そのまま淡々と三ラウンドが過ぎた。イグナショフは動きは悪くなく、ボンヤスキーの攻撃もすべて見切りダメージは受けていない。しいて言えばこつこつ当てられたローぐらいのものか。

案の定、延長に突入。延長と言えば、勝っていても延長をやらされた、延長経験豊富のボンヤスキー。まあイグナショフも多いけど。延長にきて、ここぞとばかりにコンビネーションをまとめる。イグナショフはスタミナが切れたか、手数が落ちる。ボンヤスキーはわずかにリズムに乗り、飛び膝やフライングハイも繰り出す。イグナショフはここで「バチン!」と音のする強烈なローを二発返すも、それ以上の攻撃は出ず。決定打は最後まで受けなかったが、手数で勝ったボンヤスキーが延長判定を制した。

残念だが、まあこんなところだろうか。やはり動きに切れがなく、万全ではなかった。パンチ主体に切り替えた試合勘の狂いから、上下のバランスも悪く感じた。以前はもっと左右のミドルや色々なパターンの膝を出していたものだ。ハイキックも一発も出ず。
絶不調男のスランプ脱出は、今回もならなかった。負けるぐらいなら休んでくれていた方が良かったのに、という意見もあるだろうが、しかし今回試合がなければ、我々ファンはイグナショフの今の状態もわからず、どうしているのだろうと考えながら悶々とした日々を送らねばならなかったのだ。おそらく来年まで。少なくとも今、彼がどういう状態かはわかったし、以前より確実に良くなっていることもわかった。今後、再び浮上するのも並み大抵の努力ではなかろうが、彼は今回ファンの声援に感謝していると言ってくれた。こういう良くない状態の時こそ、我々の声が力になるのだ。そう信じて、決してタオルを投げることなく応援していきたい。
ま、ボンヤスキーともまだこれで二勝二敗だからね。次は叩き伏せてやるよ、フン! え? 大人げない? ファンが負け惜しみ言ってなにが悪いんだよ!

ところで、隣に座ってたなまり丸出しのおばちゃんが延長の途中で寝てしまっていた。アホか! この大事な試合を! 終わった後もまだ寝ててオレの方に船を漕いできたので、イヤそうな顔でジロジロ見てやったら、旦那にたしなめられていた。とは言え別に謝るわけでもなく……けっ、だから生観戦は客のレベルが低くてイヤなんだよ(格オタ的発言)。
そう言えば、ホースト欠場を知らない人もけっこう多かった。ネットもスポーツ新聞も見てなきゃそんなもんかもね。

ここで休憩。ここまで2時間45分。全試合判定でもうグッタリ。
十五分の休憩(途中で宮本が前を通った。でけえ!)後、正道師範二人の演武。ここまで全試合判定ということで、もうちょっとちゃっちゃと進めてもらいたいものだが、まあ仕方がない。これを見たガキ(失礼)の中から、明日の日本人ファイターが生まれるかもしれないのだから……。
子供なんて来てるのか? と思われる方もいるかもしれないが、意外な程、親子連れが多い。チケットは買ったのかどこかからもらうのか知らないが、小学生ぐらいの小さな子供の姿が非常に目についた。合わせて、MAXでもないのに女性同士のグループなどもいる。やはりお茶の間イベントとして底辺はそこそこ広がっているのだとわかる。先も書いたが、隣に座ってたのは夫婦ものだった。
もはや、コアな格闘技ファンなど、全体の数%を占めるかどうかというところなのではないか。それに引き換えPRIDEは……などと言うつもりはない。PRIDEのミドル級グランプリ開幕戦に行った時、隣のにいちゃん二人はアリスターの話の流れの中で、レミー・ボンヤスキーの名前を思い出せないでいた。ちっともコアではない。それを言うなら、私だって大してコアではない。いくらでも上がいる。
大阪ドームに観戦に行くたびにいつも少し感じるのが、このわずかばかりの疎外感である。別にまわりに人がいようが一人で楽しめばいいのだが、よく生観戦で言われる「会場に足を運ぶ事で生じる一体感」とかいうものを一度も味わった事がない。私がそんなものを感じることは、この先あるんだろうか? まあこれは性格の問題だからな……。
きっと全日本キックの興行で後楽園に行って、大月か小林のファンになって応援すれば味わえるんだろう。まずありえないだろうが……。

演武は安廣がやればいいのになあ……と思いながらボンヤリと見る。

「続いて、足刀による氷柱割りです」

とアナウンスが入る。後ろの席から聞こえてきた会話。

「ソクトウって?」
「頭やろ」

足刀だよ! 側頭じゃねえよ! 空手家が頭突きするわけないやろ! するにしてもデコだろうが!

第6試合
ジェロム・レ・バンナ(フランス/レ・バンナ・Xトリーム・チーム/昨年リザーバー)
ゲーリー・グッドリッジ(トリニダード・トバゴ/フリー/インターコンチネンタルGP優勝)

ようやく第6試合である。オレは立ち技好きで、ローの一つまで食い入るように見てたから、別に判定続きでも退屈はしてないんだが(ぐったり疲れたけど)、隣のおばちゃんの熟睡ぶりを見るに、退屈していた人は多かっただろう。
もはや期待されているものはただ一つだ。
いきなりのローの連打が完全に効いてしまうグッドリッジ。バンナはパンチの回転がアビディ戦とは比較にならない。あれよあれよと言う間にダウン一つ、ハイとロー、パンチの波状攻撃であっという間にもう二つ!
初めて場内が大きく沸いた。予定調和的な結果なのだが、さすがバンナというところか。ラッシュを受けながら力を溜め、カウンターのフックを一発いれるのが今年のグッドリッジの勝ちパターンだったが、やはり攻撃力の桁が違う相手にはその前に叩き潰されてしまう。
ここも番狂わせは無し。

第7試合
ピーター・アーツ(オランダ/チーム・アーツ/昨年ベスト8)
マイティ・モー(アメリカ/シャークタンクジム/昨年ベスト8)

観戦記としては反則なのだろうが、ここは少し、あとから地上波放送を見ながら感じたことを交えて再構成していきたい。
私見だが、組まれた時点での今大会での最高のカードがこれだった。今年ボンヤスキーとボタを破り、快進撃を続けるマイティ・モー。サモアンフックの破壊力は驚異的で、近年衰えの目立つアーツが破壊されるところも容易に想像出来た。今大会のテーマである世代交代対決の象徴でもあり、新星が伝説を打ち砕くか、一発と技術の激突として非常にわかりやすく、結末の見えないカードであった。
アーツが登場した時の歓声も、セフォーやバンナに負けず劣らず大きかった。そこには、コアなファンもそうでないファンも関係ない、ある種の緊迫した空気があった。かつてのアーツを知るオールドファンの、簡単には負けて欲しくないという気持ち。逆に「現役にしがみつくポンコツ」を新世代の暴風が打ち砕かないかという期待感。衝撃的なKOシーンへの期待とともに、予定調和としてのKO劇が望まれていたバンナ対グッドリッジとはひと味違う、それぞれの思い入れを含んで試合開始を待つ心地よい緊張感があった。
私は技術の信奉者として、アーツ判定勝利を予想していたが、これは多分に願望を含んだものであったことをまず認めておかねばなるまい。あのオーバーハンドを一発でも食えば、アーツの動きは止まり、後はアッパーを交えた破壊力あるコンビネーションで一気に粉砕される……正直、そういうビジョンも幾度も浮かんだ。
まず仕掛けたのはアーツだった。牽制のパンチから、強烈な右のロー。コンビネーションで当てにいくローではなく、大木を刈り取るようなKO狙いのローだ。一発でモーの脚が流れる! 続いて左ミドル、プレッシャーを掛けつつ小さな連打から顎にねじ込むストレート。アーツの得意なコンビネーションだ。ついに振り出されたサモアンフックを、スウェーで躱す。一発目は、紙一重のタイミングだったかもしれない。だが、第二撃はしっかりとブロックし、再び右ローを叩き込む。これまた得意の右ストレートによるプレッシャーか、モーは思うように前に出られず、逆にアーツは細かく動いて絶妙に距離感を調整していく。
アーツ有利の展開かと思った直後、アクシデントが起きる。ローブローでストップした直後、アーツのすねが割れているのが発覚したのだ。おなじみ「職業病」とも言えるすねのカット。脚の怪我で、アーツはこれまで幾度も涙を飲んできた。が、昨年の開幕戦から変更されたルール、試合中の止血の許可、バンテージやサポーターによる保護がここで功を奏した。
試合は続行。運営の不手際など数々指摘されてきたKー1だが、このルール変更には拍手を送りたい。
中断している間、「またか」という思いもあった。それと共にアーツの「伝説」が終わるなら、こういう寂しい結末がある意味ふさわしいのかな、と埒もないことも考えた。だが、悲観的想像に反して試合は続行された。去年まではなかったルールの下で。
再開してもアーツのペースは変わらない。中断前の気迫をそのままに、怪我など意に介さずローを叩き込んで行く。モーもパンチとミドルを返すが、踏み込みがたらない。片脚を上げ、立て続けに飛ばされるローをカットするのが精いっぱいだ。そして、終了間際に異変が起きた。モーが、ローを受け続けた左ではなく、右足を不意に硬直させ、顔をしかめた。アーツはかまわず右ローをかぶせるが、明らかにおかしいのは反対側の脚だった。
一ラウンドが終了し、モーの苦悶の表情は変わらない。アーツに続き、モーにもアクシデントが発生である。
二ラウンドが始まった。アーツも異変に気付き、今度は左の蹴りを飛ばす。モーもそれに合わせてフックを振るが、完全に崩れたバランスのためクルクルとその場を回る。続けて放ったアーツの蹴りは、ローと言うにはやや高い、ミドル気味のキックだったが、これを受けた直後、ついにモーは崩れ落ちた。
大歓声が上がった。立ち上がろうとするが、まったく踏んばりが効かず崩れ落ちるモー。
結果だけ見れば、アクシデントによるすっきりしないものということになる。単にすねをカットしたアーツ以上に、モーが不運だっただけだ、と。運を味方につけたアーツの勝利、そう言っても別に間違いではないと思う。
だが、一つ別の見方を呈示するなら、モーの膝を襲ったアクシデントの原因は何だったのだろうということになる。あとでVTRを見ると、鍵となるのは一ラウンドの、左脚を上げてアーツのローをカットした瞬間だったのではないかと思えてならない。ホーストやボンヤスキーのものとは比較にならない、不格好かつ効いているから上げざるを得なかったというカットの仕方だった。おそらく練習ではしたことすらない動きだろう。その時の軸足には、果たしてどれだけの負担がかかっていたのだろうか? その後の攻撃も右足だけで踏んばって放ったものばかり。圧倒的なパワーと超ヘビー級の体重の負荷が、おそらくほんの短い間とは言え、限界を超えて右膝にかかったのではないか?
それをさしめたものは何であったか……言うまでもなかろう。

試合後、アーツは凶弾に倒れたピーター・スミットに勝利を捧げるとのコメントを残した。

http://www.boutreview.com/data/news05/050816peter-smit.html

このモー戦の結果をもって、「アーツ復活」や「伝説、健在なり」を謳うのは、いささか扇情的にすぎるだろう。だが、またしても、歴史は動かなかった。「20世紀最強の暴君」は、今年も次のステージへと駒を進める。
そして、負傷による結末であることを加味しても、この日のベストバウトがこの試合だったことは、私的には疑うよしもない。

第8試合
武蔵(日本/正道会館/昨年2位)
フランソワ・ボタ(南アフリカ/バッファローズ/昨年3位)

やれやれ、セミとメインは盛り上がってよかった、さて帰ろうか……あれ、まだあるの?
もうこれに関しては、経過は書かない。読者諸兄が御自身で試合を見て判断してもらいたい。
下がるだけのステップ。パンチ、膝、クリンチへとつなげる華麗なコンビネーション。ジャブ並にしか効いていないハイキック。武蔵戦だけキック重視、ダメージよりヒット数に変わる判定基準。立て続けに繰り出されるかけ逃げ目的のクリンチに対し、ついに警告1を出したのみのレフェリー。あげくに30対27という採点。
すべてがクズだ。武蔵コールを出来る人間の感性が、ほんとに信じられない。でも多いんですよね、これが。なんなの? 同胞意識ってやつ? ハハッ。

第9試合
ボブ・サップ(アメリカ/チーム・ビースト/ジャパンGP優勝)
チェ・ホンマン(韓国/フリー/アジアGP優勝)

まずはっきり言ってしまうと、セミがクソ試合なら、これは試合以前だった。振り回すだけのパンチ、組み立てもなにもない打ち合いに、スタミナ切れによるお見合い。ひどい内容だった。ホンマンもついに「サップよりはまし」という程度だという馬脚を現した。こういうマッチメイクをした主催者側には大きな責任がある。
だが、これを色物対決として切って捨てるのは容易いが、この色物に開幕戦進出を許したのは誰かという問題がある。ホンマンは実質スタミナ切れのガオグライ一人を打ち破ってあがったのみだが、サップには日本人ファイター三人が敗れているのだ。
大阪ドームはお見合いの最中、失笑の渦だった。情けなくて涙が出る。

総評としては、技術戦として見るべき所はあったものの、後の世に「Kー1」の歴史を紐解いたところで、一顧だにされない大会であったと言っていいだろう。一つの番狂わせもなく、古豪が順当に勝ち上がった。そういう意味では、苦し紛れの原点回帰を打ちだした昨年の開幕戦と比較しても、もうひとつ苦しかったと言えるかもしれない。
主催者には今こそ、バンナとアーツに上がった歓声と、サップとホンマンへの失笑の意味を考えてほしい。

終わったらほぼ9時。ゆうに五時間はあったことになる。
さて、抽選会が楽しみだなあ。

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