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観戦記 過去ログ 大晦日編


2006/12/31 『Dynamite!!』 観戦記

さて、大晦日です。友達と集まって蕎麦を食った後に、例によって一人抜けてやってきました、大阪ドーム。
アリーナ南の16列目ということで……おお、なかなかいい感じ。選手入場の花道のすぐ側だよ。

ついたらさっそく、オープニングファイトが開始。

▼オープニングファイト HERO'Sルール 5分3R
内藤征弥(和術慧舟會A‐3)
VS
キム・ドンウック(韓国/Team Lazenca)

1ラウンドは押していたドンウックだが、2ラウンド以降失速。内藤、序盤こそパンチを浴び、圧力に手を焼くシーンがあってヒヤヒヤしたのだが、徐々に打撃を当て、スタミナ切れのドンウックの顔面を打ち砕き、完勝。しかしインパクトのない試合だった。

開会前ということで、隣の客がビール飲んでギャアギャアとうるさい。周りが黙って試合見てたら、バカ女いわく「試合中はみんな黙るねんな」。
……フ〜。


▼第0試合 HERO'Sルール 72㎏契約5分3R
金子 賢(フリー)
VS
アンディ・オロゴン(ナイジェリア/チーム オロゴン)

なんだ、この金子の髪型。ヒーリングみたい。

金子賢、タックルからテイクダウンはすんなりと決める。ジャブからハイキックを振るアンディだが、さすがにヒットせず。しかし金子、ガードポジションからまったく展開できない。一度はマウントを取るものの、そこから仕掛けられず。ブレイクがかかり、アンディは今度はローキックに狙いを変える。
寝技素人アンディ・オロゴン側の作戦は、グラウンドはクロスガードでひたすら耐える→ブレイクの速いHEROSルールを利用。スタンドでは一番当てやすいローでダメージ&ポイントを蓄積させる。この二つに絞られていたか。対して、寝かせば自分の展開に持って行けると思っていた金子陣営は、身体能力の差を見せつけられてしまった。
終盤、ローで腰を落としかけた金子は判定負け。より素人に負けてるんだから、もうどうしようもない。さっさと消えて下さい。


▼第1試合 HERO'Sルール 70㎏契約5分3R
永田克彦(新日本プロレス)
VS
勝村周一朗(勝村道場)

いやあ、最初のタックルと打撃の攻防だけで、前の試合とレベルの違いが見せつけられて、ほっとしたようなうんざりしたような……。
勝村は打撃もトリッキーな動きで、細かくヒットさせる。対する永田さんは、いきなりタックルにくるかと思ったが、予想に反して打撃の攻防に応じる。ヒット数は勝村だったのだが、強打は永田さん。一発合わせて勝村尻餅。その後のグラウンドの展開は凌いで立った勝村だが、飛び膝にパンチを合わせられ、パウンドを浴びる。ほとんど本能でか下から仕掛けようとしたが、続けて落とされたパウンドでレフェリーがストップ。
永田さんは随分と総合ルールが板について、総合格闘家として形になっていた感じ。強いかと言われると?だが、今回の試合は好感が持てた。層の薄いHEROSでなら、宮田と並んで上に行けるかも。


▼第2試合 HERO'Sルール 85㎏契約1R10分 2・3R5分 延長R5分
石澤常光(フリー)
VS
金泰泳(正道会館)

カシン、開会式ではマスクだったが、入場の時はすでに脱いでいた。
ジムのNインストが、金泰泳のミドルについて熱く語っているのを聞いたことがあり(ミドルキックでサンドバッグが曲がる!らしい)、気分的には金を応援。
さて、立ち技出身選手が総合で勝つには……やっぱり基本的にはミルコスタイルなわけよね。テイクダウンを取らせず、細かいパンチやローなどリスクの少ない打撃をこつこつと当てる。石澤のタックルはおそまつで、金はそれを切りまくりつつ強烈なローをヒット。これは金子VSアンディと似た展開になるか?
相当ローは強いようで、これはこのまま足が効いて倒れるかな……と思ってたら、突如、金の上段回し蹴りが直撃! おおおおおおお、すげえ! 出た!
いやはや、鮮やかに決まった。なんてことのないカードだと思っていたが、こういう内容なら万々歳だな。次はぜひマヌーフ戦を。


▼第3試合 HERO'Sルール 70㎏契約5分3R
所 英男(リバーサル)
VS
ホイラー・グレイシー(ブラジル/グレイシー・ウマイタ)

これはなかなか噛み合った好試合に。寝技でも所が押していたが、やっぱり41歳でここまで動けるホイラ−がすごいんだろうなあ。
多少、打撃がヒットする場面もあったし、判定も所で妥当なとこか。

しかし寝技の攻防で退屈したのか、前の席に座ってたブタ女が携帯を見出して、「うわ、美濃輪負けてんて〜! あたし美濃輪けっこう好きやねんけどなあ」
殺すぞブタ! オレは帰ってから見るんだよ! その鼻の下のケツの穴をいますぐ塞いで試合中はおとなしくしてろ! ああ……去年は良かったなあ……。


▼第4試合 HERO'Sルール 5分3R
曙(チームヨコヅナ)
VS
ジャイアント・シルバ(ブラジル/フリー)

うーん、ジャイアント・シルバはますます太ってるな。これはいくら曙と言えど、互角の展開になるんじゃないか……。曙のジャブが速いという話もあったしな。しかし組み合ってすぐにジャイシルがアームロック!

「あの技は……!」
「戦闘竜を倒した……アームロック!」

とまあジャンプマンガのごとく一人で解説入れて遊んでしまったが、スタンドからそのまま倒れ込み、あっさりと極まってしまう。わはははは、倒れることで逃れようとしたのかもしれないが、シルバはそこそこバランスも良かった。彼の持つ唯一の技なんだろうけど、あの巨体と腕の長さだから、はまれば逃げられんな。
さすがに当分、曙は見ずにすむだろう。シルバは……HEROSに本格参戦か?

ここで20分休憩。予想を超えてサクサクと進み、いい感じ。


▼第5試合 K-1ルール 3分5R
バダ・ハリ(モロッコ/ショータイム)
VS
ニコラス・ペタス(デンマーク/スピリットジム)

バダ・ハリが入場時、全然踊らず歌わず、大マジな表情で入場。いったいどうしたんだ!? ペタスは袴で入場……だが、アンディ・オロゴンにすでに同じネタをやられていたのだった。
これはかなり楽しみな試合だった。序盤、ローブローの応酬などあってヒヤヒヤしたが、ハリは怒る素振りもなく、実にクリーン。
ペタスはロー中心の組み立てだが、ミドル、ハイのコンビネーションを出すバダ・ハリ、同じ蹴り中心の組み立てなのに、手数が倍。ワンツーから強烈なミドル、ハイ。ペタスはガードするものの、技の切れに場内からため息がもれる。前蹴りも効果的で、ハリペースで進む。それでもペタスのローは効いてくるかと思ったが、2ラウンド、突然ガードを下げて戦意を喪失するペタス。なんだ? ボディか?と思ったが、どうも腕だったらしい。スネを叩き付ける強烈なミドル、左腕に受けたペタスは再びガードを落とし、タオルが投入された。
現在ベスト16のハリとの対戦は、ペタス復帰の試金石となるかと思ったが、残念ながら実力差がありすぎた。左腕はもとから痛めてたのか試合中に痛めたのか知らないが、閉会式では吊ってたので、折れたかも。せっかくの復帰戦としては切ない内容だった。
ハリは打ち合うよりもこういうスローペースな試合運びの時が強いね。


▼第6試合 K-1ルール 3分5R
武蔵(正道会館)
VS
ランディ・キム(韓国/フリー/02年アジア大会砲丸投げ優勝)

やはりというかなんというか、ランディ・キムの持ち技はワンツーのみ! こんなのオレでももらわないよ〜!(爆) 逃げ回りつつ単発の攻撃を当てる武蔵君の弱い者いじめにより、キムは徐々に失速。最後はパンチを浴びてノックアウト……って武蔵のパンチで倒される奴なんて初めて見たよ。くだらねえ〜。


▼第7試合 K-1ルール 3分5R
セーム・シュルト(オランダ/正道会館)
VS
ピーター・グラハム(オーストラリア/ムンダインズジム)

2003年開幕戦以来、まさかこの大阪ドームで再びグラハムを目にするとは思わなんだ。
試合はいつものコツコツシュルトさんの一方的ペース。しかしやはり緊急オファー、シュルトさんの打撃に切れなし。ジャブは当たるが右が当たらず、ローと前蹴りもあまり出なかった。パンチ、ハイで倒そうと一発狙い過ぎ。普通の選手なら大振りでも結構沸いたりするんだが、シュルトさんの一発狙いはそれでもコンパクト。まああのリーチでさらに大振りなんてしたら、当たりゃしないからね。
判定は大差でシュルトさん圧勝。グラハムは幾度かパンチは当てたが、いいとこなしだった。


▼第8試合 HERO'Sルール 70㎏契約5分3R
須藤元気(日本/ビバリーヒルズ柔術クラブ/UFC-JAPAN王者)
VS
ジャクソン・ページ(アメリカ/ジャクソンズ/WEF世界ウェルター級王者)

元気さんの入場は去年の方が良かったなあ……もうほぼ空気。去年は山本KIDの待つ大事なタイトルマッチの舞台に、それでもわざわざあの入場で乗り込む、というぶれないスタイルが良かったのだが、今日はどうってことない相手でしょ?
ペイジは打撃を振り回してくるかな、と思っていたが、元気さんがあまりに簡単にテイクダウンを許す。ちょこちょこパウンドも浴び、ありゃりゃと思ってたが、しかし下からじっくり仕掛けて三角でフィニッシュ。
やっぱダメだ、練習できてなかったな、と思ってたら、ここでマイク……引退宣言。試合後重大発表というのは聞いていたので、9割がたそうだろうと思っていた。ここ数年、どこかしら怪我が耐えなかったのをだましだましやってきていたのは明白だったし、トーナメントで過酷化するHEROSのスケジュールにもついていけなくなっていた。
今回は大した相手ではなく、引退を飾る試合としては物足りないものだった。格闘家として、競技者として「強さ」「上」を目指す姿勢には、物足りないものを感じる選手だった。だが、王者となる器ではなかったと達観し、自分で引き際を決め、ファンの拍手を受けながら、笑顔で花道を歩いて帰って行く引退は、悪いものでもないと思う。須藤元気はあくまで己を知り、己の身の丈にあった格闘家人生を送り、それに相応しい幕引きをしてみせた。そういうことではないかな。

ここでまた休憩20分。


▼第9試合 HERO'Sルール 65㎏契約5分3R
山本"KID"徳郁(KILLER BEE/初代ミドル級王者)
VS
イストバン・マヨロシュ(ハンガリー/レスリングアテネ五輪55kg優勝)

まあ……なんというか……やっぱ長いわ……。ここらへんで集中力が切れてきた。進行はスムーズだし、全然退屈もしていない。しかし、なんか感覚が鈍磨してきた。こういう状況を救うのが「勝負論」だと思うんだが、それが今回なかった。はあ……KIDさん……さっさと決めちゃって下さいよ……。
マヨロシュはさすがにへなへなのパンチなど出し、全然ダメな雰囲気全開。しかしまあ顎は引いてるしフットワークはまずまず。しかし何度か仕掛けたタックルはあっさり切られる。KIDはパンチを幾度か当てるも当たりが浅く倒せず。意外に粘る……と思い始めたところで、ボディに膝が突き刺さり、あっけなく亀に! 上から優しく殴るKIDさんを見て、レフェリーが止めた。
砲丸投げよりはマシだったが、やっぱり素人イジメだったなあ。やれやれ。


▼第10試合 HERO'Sルール 5分3R
チェ・ホンマン(韓国/フリー)
VS
ボビー・オロゴン(ナイジェリア/チームオロゴン)

歌とダンスで入場のホンマン。結構うまいじゃないか。バダ・ハリも「オレもなんかやっとけばよかった……」とちょっと思ったんじゃないか。
いきなり飛び膝蹴りを繰り出すが、あっさり叩き落とされるボビー。ホンマンはボビーの足をつかんでリング中央にひきずり戻し……って簡単に書いたが、これって異次元の光景だよな。ゆっくり膝を突いたホンマン、パウンド三発。脚が間に入ってるとかガードとか、お構いなし。ボビーの顔ぐらいある拳が、あっさりと意識を飛ばした。
……ボビーがスタンドで行っていれば、もっと悲惨なものが見られたかもしれないし、これで良かったのだろう。この規格の違いの前には、どんなに早く止めても止め過ぎということはなかろう。


▼第11試合 K-1ルール 73㎏契約3分5R
魔裟斗(シルバーウルフ)
VS
鈴木悟(フリー/元プロボクシング日本ミドル級王者)

さて、魔裟斗さんはローでの蹴殺宣言。試合開始早々、脚を上げまくる鈴木! おおおおおおお、こんだけカットされたら、さすがになかなか決まらないんじゃないの。それでも構わずローを振る魔裟斗に、鈴木のカウンターの右がヒット。大東が全てのパンチをグローブ一個分外されたのに対し、鈴木は幾度か当てたな。それでも最初の数発のローが効いていたか、魔裟斗が半身になって避けはじめると、もう捉えきれず。
しかし一応カットしてるし、ちょっと長引くかな、と思ったら、2ラウンドで鈴木はバッタリ。あれれれれ、カットしたすねをやられましたか。絶対に無理をせずにKOするあたり、実に魔裟斗らしい。鈴木は一年やってるのに、まだローでやられるのか……もう一試合、二試合してたらましだったかな?


▼第12試合 HERO'Sルール 85㎏契約1R・10分、2R・5分、延長1R・5分
秋山成勲(フリー/初代ライトヘビー級王者)
VS
桜庭和志(フリー)

さて、メインイベント。秋山が大勢のちびっ子と入場したが、あまりに人数が多過ぎて、選手のコールが始まってるのにまだぞろぞろと入ってきていた。奴らはどこに座ったのだ?
そこそこ期待感のあった試合だが、内容はほぼ桜庭VSスミルノヴァス戦の焼き直し。バックブローで倒れた桜庭に秋山が襲いかかり、パウンドの嵐。足を取りに行くが逃げられ、またもロープからはみだす桜庭。「ドントムーブかな」と思ったら、そのまま続行。早く止めろよ。なぜかゴングが鳴り、場内は静寂に包まれる。その中で一人勝ち誇る秋山……。
ようやくKOがコールされたが、顔の腫れまくった桜庭はなにか言っているらしい。
よくわからんまま家に帰ったが、後で速報見ると……ん? オイル? どうも話が見えないなあ。どちらかが嘘をついているということか……。試合前後のチェックでは何もなかったということだが……。

1.桜庭が嘘をついている。あるいは、もう腕に力が入ってなかったので錯覚した。オイルに類するものは塗られていない。
2.秋山が嘘をついている。そして、審判団がそれを庇っている。オイルに類するものは塗られていた。
3,秋山が嘘をついている。そして、審判団はそれを見破れない、あるいは滑ると判断しきれない。オイルに類するものは塗られていたのだが、チェックがずさんで判別できていない。微量ないし試合後すぐに拭き取られたなど何かのトリックがある。
4,どちらも嘘はついていない。秋山の汗はナチュラルに滑る。そういう人は本当にいる。例:レノグ

うわあ、下らない。こんなこと、格闘技見て考えるようなことじゃないよねえ。レフェリーのストップに関しては、あれでも遅いぐらいかと。前戦ほどダメージを受けていたわけではないが、あの時は失神寸前なのに止めないという異常な状況だったわけで、本来参考にしてはいけない。今回も充分危険だった。ただ、その危険な状態に追い込まれたのがオイルの有無によって、というのなら、結局問題はそこに行き着く。桜庭の「タイム」も同様。これらを議論するよりは、おおもとのオイルの存在を確かめることが重要。

まあ何か塗られていた、というのはそうなんじゃないですかね。ただ、オイル、ワセリン、そういう露骨なものではなく、触れたぐらいでは判別できず、しっかりとつかみ力を込めた時点で初めて効力を発揮するような「何か」。ルールで規制していない方法で塗られた「何か」。汗が止まればすぐに乾き、証拠も残らないような「何か」。それを秋山は柔道の昔から常に使い続けているのだ……。

終わったら結局9時で、いや長かった。開始は速かったし、KOも多かったのにな。顔見せ試合ばかりで、最後の方は集中力も切れそうだった。やっぱりオレは一人で家で見てた方が性に合うなあ、とまたまた再確認。こんなカードばかりなら、来年はちょっと考え直そう。

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観戦記 過去ログ キックボクシング編

2007/8/19 『CAP THE CLIMAX』 KAKUMEI KICKBOXING 観戦記

会社で順番に感染していた夏風邪が、ついに僕のところに!
なんか鼻がズルズルするだけですが、調子わりい〜。
そんな中、自転車を飛ばしてアゼリア大正まで行ってきました。

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観戦記 過去ログ K-1WGP編

2006/9/30 K−1WGP開幕戦 観戦記

大阪は今日の気温も30度近く。残暑の厳しい日が続いております。自転車を飛ばして、今日も行ってきました大阪城ホール。
昔、ワールド・オン・アイスを見に行った時以来、ということですが、全然記憶と違ったなあ。こんなに小さかっただろうか……。

20分ほど押して入場。うーん、さすがに大阪ドームと比べると見劣りするなあ。パンフレット買って席でぼんやり。しかしSRS席の17列目ということだが、距離的にも角度的にも2003年にドームで座ったとこと同じぐらいのランク。しかし、会場は小さくなってるんだから、ちょっとぐらい前に行ってくれんもんかね? いささか釈然としない。

オープニングファイトは、野田貢VS長谷川康也。長谷川はすごい腹ですよ。試合は野田が膝とパンチをガンガン当て、圧勝。二度目のダウンを取ったフックはきれいだったなあ。長谷川は自分のジムでは無敵なんでしょうが、あの体格では……ちょっとレベルが違った感じ。

続いてオープニングイベント。全選手入場! この入場口がすぐ後ろで、選手が良く見えて良かったなあ……ってオレの席はどんだけ後ろなんだよ! ここでバンナ登場……本気で安心したよ。
子供演舞の後、いよいよ試合開始!

<第1試合 GP1回戦 3分3R延長1R>
ルスラン・カラエフ(ロシア/マルプロジム)
バダ・ハリ(オランダ/ショータイム)

で、出た、これが長いと評判悪いバダ・ハリの入場か。入場曲を口ずさみながら、花道で延々とパフォーマンスし続ける! 次に入場したカラエフが、えらくあっさり入ったように見えたぜ。
さて試合開始、バダ・ハリ、前蹴りでカラエフの踏み込みを止めると、シャープなローキックを打ち込む。小気味良い音が会場内に響き、カラエフは早くも身体が流れる。予想通りの作戦か。当然カラエフは距離を詰めて強引に仕掛けるだろうし、ここを凌げばハリのペースか……と思いきや、コーナー際の攻撃でハリが尻餅、ダウン! なぜか完全に効いてるようで、10カウント以内に立ち上がれず。なんだ?
VTRを見ると……うーん? ダウン後のローキックが入ったか? ハリは試合後も収まらない様子でなかなか引き上げようとしない。
非常に後味の悪い結末。ハリはダウン後の加撃に怒ってるのかと思ったが、帰って見てみたら肘も入ってる模様。いや、故意ではないとはいえ、これはひどい反則だ。その前のパンチだけなら、有効打であるにしてもKOには到らなかっただろうし、バダ・ハリも怒るだろう。
正しいレフェリングは、回復を待って再開だったのだろうが……ダウンをコールしてしまってはなあ。要は肘が当たったのがわからなかったということか。なんかこれは後を引きそうな感じ。


<第2試合 GP1回戦 3分3R延長1R>
ゲーリー・グッドリッジ(トリニダード・トバゴ/フリー)
レミー・ボンヤスキー(オランダ/チームボンヤスキー)

さてさて、アーツ欠場で勝って当然というムードのレミー。これは結構プレッシャーかも。しかし序盤、ゲーリーのボディを凌いだレミー、ひさびさ、本当にひさびさのフライングニー直撃! お帰り! まあその後はいつもの下がってしまうレミーに戻ってしまったわけですが、しかしこの膝も試合止めてもいいぐらいの強烈な一発であった。
2ラウンド、やや様子見してしまったレミーだが、地味にローとミドルは効いていた模様。3ラウンド、ダメージ手は出ないまでも前に出てくるゲーリーに、パンチのコンビネーションから膝、さらにパンチからハイキックで追い打ち! 膝が効いていた様子のゲーリー、前のめりに崩れ落ち、ビジョンに目をやると……血が噴き出しているう! ここで試合終了。
いやはや、アーツとだったらどうだったかは皆目わからないものの、怪鳥の殺人技は完全復活! 凄まじい攻撃力を見せつけた。


<第3試合 GP1回戦 3分3R延長1R>
グラウベ・フェイトーザ(ブラジル/極真空手)
ポール・スロウィンスキー(オーストラリア/ファインダーズユニムエタイジム)

これも注目の一戦。お互いあまり間合いを取らず、延々と蹴りの届く距離で戦い続ける、見てるだけで痛くなる神経戦に。グラウベのミドルとポールのロー、グラウベの一発狙いのフックとポールのコンビネーションが交錯する。だが、リーチと破壊力に勝るグラウベが、強打を叩き込んで優勢。決め切れなかったものの、コーナーまで押し込む場面も幾度か作り、磐石の勝利。ポールはちょっと真正直に行き過ぎたか? 正対して戦うスタイルだから仕方ないが、こういう相手には少し戦法を変える必要があるのかも。


<第4試合 GP1回戦 3分3R延長1R>
セーム・シュルト(オランダ/正道会館)
ビヨン・ブレギー(スイス/マイクスジム)

ここまで波乱なし……番狂わせがあるとすればここかと想像してたのだが……。
おなじみ前蹴りを飛ばすシュルトだが、ブレギーは強引に距離を詰めてフックを狙う。シュルトは後退しながらかわすが、ブレギーは距離を詰め続け、一発二発とヒットさせる。これは、と思った直後、ブレギーの左に合わせ、カウンターでシュルトの左ジャブが直撃! 身長差があるのでブレギーはショルダーブロックも出来ず、まともに食らってダウン! クロスとはいえ、まさか何でもない左ジャブで……。
レンガパンチ恐るべし、シュルトはなおもジャブを連打し、ブレギーを圧倒。あっさりと試合を決めた。
いやあ、ブレギーがもう少し肉薄するかと思ったのだが……。いかにアーツがすごいかがよく分かるな。


<第5試合 GP1回戦 3分3R延長1R>
レイ・セフォー(ニュージーランド/レイ・セフォーファイトアカデミー)
ステファン“ブリッツ”レコ(ドイツ/ゴールデングローリー)

さて、慎重な立ち上がりを見せる両者。レコは距離を取ってローキック、ピシイッという鋭い音が響く。セフォーも得意のノーモーションの右ローで応戦。お互いなかなか手を出さず、ローの攻防に終始。ただ、プレッシャーを掛けているのはレコで、セフォーはカウンター狙いか。レコはプレッシャーを掛けていい立ち位置をキープするが、そこからのパンチ勝負には出ない。距離が詰まるとプッシングで距離を取る……これがうまい。ホーストみたい。予想では、ここでセフォーが前に出ると思っていたのだが、なぜか終始カウンター狙い。前に出てかわされ、スタミナを消耗するのを怖れたか? ただ、判定にもつれこんだ時点で、命取りになったのはこの消極的さではなかったか。
倒す姿勢が見えなかったのはお互い様だが、セフォーは省エネファイトが見透かされていた印象。パンチで攻勢点をもぎ取る戦い方をなぜしなかったのか? スタミナに不安があったか、プレッシャーに負けたか。ノーガードも挑発もほとんどなかったのが、余裕のなさの現れだったのかも知れない。仕掛けずに試合をリードしたレコのクレバーさが光った。

ここで休憩、15分。いやあ、KOあり、神経戦ありで進行は早いながらもうグッタリ。アリーナはざっと満員、スタンドは8割ぐらいの入りか? 城ホールでこれではちと寂しいかな。しかし、なんというか回りの客のお行儀がいいですね〜。左右の隣は、オレと同じく一人で来てるマニア。イベントノリで来てる奴がいなくて、みんな真剣に試合見てる感じ。良かったですわ。

休憩明けに、マイク・ベルナルド引退セレモニー。テンカウントゴング、花束贈呈。寂しさを振払うように陽気に入場したベルナルドだったが、最後は声を詰まらせていた。
彼の試合は2003年イグナショフ戦しか、生で見る機会はなかった。選手生活末期は「番狂わせ」される方というポジションが定着してしまっていたが、全盛期の強さは圧倒的であった。
お疲れ様でした! しかし今日、会場が一番沸いたのもこの時だったような……。

<第6試合 GP1回戦 3分3R延長1R>
アーネスト・ホースト(オランダ/チームミスターパーフェクト)
藤本祐介(日本/モンスターファクトリー)

さて、今日唯一の消化試合、と思っていたのだが……。
ホーストのバランスが悪い! レバーブローは遅くて顔面へのフックを合わせられるし、パンチは空振り、ローを蹴った後で態勢を崩す! 構えからして、後ろにのけぞって尻餅をつくシーンは全盛期にもあったが、今日は左右のバランスまでもが悪い。藤本のパンチが結構当たっている。
まさか……まさか……あのホーストが日本人に初白星を献上して引退? 藤本は今日は珍しく積極的に手を出しており、パンチが冴えている。これはひょっとして……と思っていたのだが、やはり所詮は藤本だった。2ラウンドから藤本のバランスまでもがグラグラになり……完全にローキックが効いてしまっていた。踏み込んでパンチ打ってるから、全然カット出来てなかったのね。
3ラウンド、パンチを振るった藤本に対し、ローを合わせたホースト、二人同時に倒れ込む。今日の二人の出来を象徴したようなシーンだったが、結果はやはり実力差を如実に示していた。藤本は完全に脚が効いて立ち上がれず。ホーストのKO勝利って、何年ぶりっすか?
しかしやはり藤本は出場選手の中で、一枚も二枚も下だった。結局、ここ二年ハワイ、ソウルとろくにローも蹴られない選手とばかり対戦していたつけが、大きくきてしまったわけだ。


<第7試合 GP1回戦 3分3R延長1R>
武蔵(日本/正道会館)
ハリッド“ディ・ファウスト”(ドイツ/ゴールデングローリー)

さて、カード的、勝負論的にはかなり興味の薄い試合……のはずなんだが……もっとも入れ込んで見る事になるのはこの試合であろう、というのも最初からわかっていたことであった。しかし、前日あんな予想を立てておきながらも、「日本人のいない」ベスト8、「武蔵のいない」東京ドームというのが、あり得るはずがないとも、心のどこかで思っていた。だが、それでも思考実験として私は、武蔵に「ダウンを奪う事なく判定で勝つ」にはどうすればいいか、を必死に考えていたのである。

前提条件
武蔵を上回るパンチのテクニックと、対等以上のスピードがあること。

まずは最低でもこれが前提だ。昨年のボタ、一昨年のアビディはスピードで遅れを取り、なおかつパンチもワンツー以上のものが出せなかった。昨年決勝のカラエフ、そして今回戦うハリッドは、この条件を満たしている、と言える。しかしカラエフは結果として敗れた。彼の捨て台詞はこうだ。

「判定では勝てないのはわかっていた」

そうなのかもしれない。だが、どこかに突破口があるはずだ。そう信じなければやってられないではないか。

勝負の鍵を握るのは第一ラウンドである。
昨年、カラエフはここからエンジン全開で攻めた。武蔵はローで応戦。
おおまかな印象だが、

カラエフ……手数10 ダメージ5
武蔵……手数5 ダメージ4

というところだった。普通に考えれば、ポイントはカラエフのものとなる。だが、これがもしイーブンと取られたらどうなるだろう?
次のラウンドが仮に、

カラエフ……手数8 ダメージ5
武蔵……手数5 ダメージ5

だったとした場合……「手数の減った」カラエフが逆にポイントを奪われるということになる。絶対的に見ればカラエフが押しているにも関わらず、一ラウンドとの相対的な差で武蔵にポイントがついてしまうのだ。
カラエフが二ラウンド以降にポイントを取ろうとしたら、

カラエフ……手数12 ダメージ6
武蔵……手数5 ダメージ5

これぐらいは攻めないと、一ラウンドのイーブンというジャッジを崩せないことになる。
結果として、圧倒的な手数をまとめたはずのカラエフは、武蔵に敗れ去った。

武蔵の弱点は手数……もはや周知の事実だが、その弱点がこういう形でスポイルされていては、勝つ術など見当たらない。
が、第一ラウンドに実は大きな勝機が隠されているのである。それは、「あえて手数を出さない」ことだ。
最初のラウンドを、

ハリッド……手数5 ダメージ2
武蔵……手数5 ダメージ2

とにかく消極的に立ち回り、攻撃は牽制程度に止め、「様子見」をしているふりをするのである。消極的なのは元からの武蔵も当然、様子見に徹してくるだろう。だが、これがトラップなのである。

手数が同じでもダメージがなく、あくまでお互い「様子見に徹した」という印象をジャッジに植え付け、このラウンドをイーブンと採点させるのが、この作戦の最大のポイントである。上記のカラエフ戦の論法ならば武蔵にポイントを与える理屈になるが、本来積極性をアピールすべきところで消極姿勢を見せ、武蔵の待ちの戦法を過大に採点させない布石を打っておくのである。

そして第二ラウンド以降、温存しておいた手数を爆発させる。

ハリッド……手数8 ダメージ6
武蔵……手数5 ダメージ4

「本来のジャッジ」ならば、これぐらいでも当然イーブンにつけるところだ。だが、第一ラウンドで「同じ手数」のところをイーブンにつけてしまったことが、ジャッジを縛る。K−1は曲がりなりにも、ラウンドごとの採点を公開している。お互い動きのなかった内容の第一ラウンドをイーブンにつけておきながら、次のラウンドで明らかに一方に流れが傾いた展開を同じくイーブンにつける……後から採点表を振り返ればどう思われるか? ジャッジはバランスを考え……手数で勝る方にポイントを与えざるを得なくなる!

手数やダメージの数値はあくまでイメージだが、なんとなくご理解いただけたろうか? 試合を振り返るに……ゴールデン・グローリーの首脳陣が、深く意識してではないにしろ、このジャッジングのパターンを考慮していたのは間違いないのではなかろうか?

果たして、第一ラウンドはさほど手数を出さなかったハリッドは、2ラウンド以降、蹴りも交えて勝負を賭ける。チェンジ・オブ・ペースと合わせて今回徹底されていたもう一つの作戦……それは左方向へのステップワークだ。常に左へ左へと回りながら、小刻みにパンチを打ち込む。武蔵のガードの空いた隙を狙ってパンチを入れ込むと同時に左へ回り、武蔵最大の武器である左の蹴りの威力を減殺させるのだ。正面から行けばロー、ミドル、膝を浴び、ボディにダメージを蓄積される。カラエフはこのダメージでポイントを取られた。だが、左に回り続けて攻撃を殺せば、スタミナと精神力に優れたハリッドに、決定的なダメージを与えることはできない。谷Pが「ミドル、ミドル」と言っていたが……出してもヒットする位置にハリッドがいないのではどうしようもない。それでもローは幾度か当てたが、動きを止めるには到らない。カウンターで蹴りをもらう危険性が減れば、思い切ってパンチのコンビネーションも打ち込める。フック、アッパー……パンチが面白いように顔面を捉えだす。
武蔵も逆に正面から右寄りの位置に行こうとする素振りを見せたのだが、ハリッドの動きが早く追い付けない。武蔵のリングネームの由来はサウスポーとオーソドックス、どちらも使える「二刀流」から来ているはずだったが、オーソドックスにスイッチしたのは一瞬だけだった。練習していなかったのだろう……。

ハリッドのスピード、手数を止めないスタミナと、一発やそこらではひるまない精神力、フックとアッパーを使い分けガードの隙間にねじ込むパンチのテクニック、それら全てが揃ってこその完璧な作戦である。クリンチ、背中、スリップダウン……最終ラウンド、ついに武蔵が醜態をさらす。なんだかんだと言って安定感を増していた近年、ここまでの劣勢に追い込まれたことはなかったのではなかろうか。圧力に負けイエローをもらったシュルト戦、ダウンを取られたグラウベ戦以上に、内容の差が見せつけられる。
真正面から手数で勝負を賭けてくるカラエフが、武蔵に取ってリスクの大きい相手だったことを、昨年の決勝大会から首脳陣は理解していなかったのだろうか。スタイルが似ていて、バス・ブーンの頭脳までが加わったハリッドがそれ以上に危険な相手だということも想像できなかったのだろう。

勝負は判定へ。
いやしかし、それでもメチャメチャハラハラしたね。完全に武蔵が効いてたのはわかってたんだが、それでももしやと思うと……。一人目は30対29でハリッド。当然! 場内も大歓声。続いて28対29で……なんと武蔵! ここで上がった「えええ〜!」という叫び声の大きさ! 聞け、首脳陣よ、これがファンの声だ! それでもいやな予感が黒雲のようにわき上がる。2004年決勝……拳を上げたセフォー、黙って立ち尽くしたガオグライ、そして2度に渡る延長の判定に一度は目を剥き、もう一度は怒りを押し殺すようにしていたレミーの顔が、走馬灯のように僕の脳裏を掠めた……。運命の瞬間。
そして最後の一者は、

「30対29……………青、ハリッド!」

うおおおおーっ! もちろんオレも大拍手!
おめでとう、ハリッド! 見事な戦いでした! 判定で武蔵を破る……これがいかに至難の技か、K−1ファンなら身にしみてご存じだろう。

仮に延長だったとしても、武蔵に勝機はなかっただろう。判定を待つ二人には、それほどの差があった。武蔵に勝機があったとすれば、それは2004年セフォー戦のように、下がって下がって下がりまくることだったろう。パンチのダメージを最小限に止め、ミドルレンジをキープすることだ。だが、この日のハリッドのスピードと切れから距離を取り切れたか、そしてワンツースリーフォーとつなげてくる連打へのディフェンスの途端なお粗末さを見ても、厳しかったかもしれない。それでも、決して前に出るべきではなかった。

東京ドーム、ベスト8の常連となり、周囲の期待も大きくなった中で迎えた、初めて予選から上がってきた相手。武蔵にあったのは、勝って当たり前という期待に応えようとする責任感よりも、自分は強い、日本人は外国人選手とも互角に戦える、という「格下」に対する慢心ではなかったか。その慢心が彼に「弱者の戦略」を忘れさせ、かかる結果を招いた。己の戦い方を貫けぬ者に勝利などない。たとえそれが、どんなにくだらない戦い方であってもだ……。

もう一つ付け加えるとすれば、「金持ち」で戦いを「趣味」としているハリッドに、「貧乏」で戦いを「人生」の中心と位置づけるハングリーな武蔵が挑む、という構図が盛んにアピールされていたこと。実際には、K−1という世界の中で優遇され、贔屓されていた武蔵に対し、アビディやライティ、カーターなどに敗北しながら何度も予選から挑み続けてきたハリッドのハングリーさが上回ったという、文字どおりの結果でしかない、ということだ。

しかし何と言うか……勝利に沸き返るハリッドとゴールデングローリーを見た時に感じたものには……一抹の寂しさも含まれていた。一つの戦いが終わったことに対する、なんとも言えない寂寞感。今までヤオ判定に血圧を上げ続けた日々が、なぜか懐かしく感じられるような……。ありがとう、そして、さようなら武蔵……。

シュルト
「SIOにはみんなが貸していたのだよ。10年前から大勢の人間が……あらゆるものを貸していたのだ」

ハリッド
「戻って来ねえものが……多すぎるがな……」

シュルト
「ああ多すぎるな……そして大きすぎる……わしらの失ったものはこの地球にも匹敵するほど大きい…しかし…彼らのおかげだ…彼らのおかげでわしらは勝っているのじゃ…」

「佐竹! ガオグライ! アーツ! 終わったよ…」

……というわけで、日本一長い武蔵VSハリッド分析でした。笑って読んでいただければ幸いです。

SIO陥落の余韻に浸る間もなく、メインイベントが始まる。
映画撮影によって欠場の噂が出ていたバンナだが、来日は当日の朝。明らかな異常事態に、こちらもストレスが頂点に達していた。選手が当日セレモニーに出て、初めてホッとする……ってなんなんだ?
そんなこちらの心配をよそに、バンナは身体も絞り、やけにすっきりと男前。完全に映画モードだよ……!

<第8試合 GP1回戦 3分3R延長1R>
ジェロム・レ・バンナ(フランス/レ・バンナエクストリームチーム)
チェ・ホンマン(韓国/フリー)

まあ正直、いくら煽ってもKOは難しいかな、と思っていた。倒すならローか?とも考えたが……。バンナは細かいフェイントを交えて攻撃の隙をうかがうが、ホンマンは相変わらず見る構えで、誘いに乗らない。ならばとローとミドルを振っていくバンナ。ホンマンはカウンター狙いでパンチを振るうが、バンナは動きが切れており、頭を振ってかわす。時折飛び込んでパンチを当てるバンナだが、ホンマンのパンチと膝のプレッシャーが強く、連打を狙えない。
まあ試合展開を言うと、延長が終わるまではずーっとこの繰り返しで、山が作れなかった。ホンマンが出てくれば展開も変わったろうが、出続けるスタミナはないのだろうなあ。悪い意味で勝つための戦略にこだわり、逆にテクニシャンには決定打を与えられずに敗れるというスタイル。ただ、バンナ、ボンヤスキー、グラウベなどなら難なくローキックを当て続けるだろうが、それ以外の選手ではなかなか厳しいかも……。
面白い試合ではなかったが、最後は蹴りの有効打に勝ったバンナが制した。健闘を称え合う二人……なんというか、良くも悪くも殺伐としたところのない今のK−1を象徴したシーンであったな。逆にバダ・ハリみたいなリアルに危険な人は浮いてしまう。だからこそ、逆に彼のような存在が求められるのだろう。ただ、そういう危険な人がルール内で強いかというとそうでもないわけで……。

終了後は、勝ち上がった8人がリングに集結し、それぞれ挨拶。この時、会場の隅でポール・スロウィンスキーがその様子を見ていた。すぐにファンの写真攻めに合ってしまっていたが、心中にはどんな想いが去来していたのであろうか。来年は、あの8人に入れるように頑張ってくれ!

この時、バンナさんが「契約に関する問題をクリアにしてくれた」ある人物に感謝の言葉を述べていた。
詳細は、こちらを御覧頂きたい。

http://blog.goo.ne.jp/chaser34/e/175a11d7b551db730d424bbc4693cab4

ありがとう、アラン・ドロン!
大げさかもしれませんが、K−1はこれで救われました。

さて、番狂わせもありつつ、トップ陣も順当に強さを見せつけ、全体的にいい雰囲気の興行だったと思う。バダ・ハリの件は遺恨が残るかもしれないが……。
ただ、客入りという点では寂しかったし、視聴率も昨年の開幕戦より落ちているとのこと。ハリッドが初めてドームに勝ち上がったが、まだ新スター誕生とは言いがたいし、決勝大会も実力者が揃ったとはいえ、客の呼べる面子とは言えないだろう。格闘技界に吹く逆風は、まだ収まってはいない。今後も厳しい状況は続くだろう。
ただ、直接イベントを見に来れない遥か海外にも、K−1、ひいては日本の格闘技界に期待している人はまだまだ大勢いる。先のアラン・ドロンがいい例だ。
そういう人々に応えるためにも、今後も襟を正したイベント運営を行ってもらいたい。

ハリッド勝利の祝杯をあげようかと思ったのだが、疲れて頭が痛かったのでやめた。
さて、東京ドーム展望は、次の抽選会の記事で。

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観戦記過去ログ K-1MAX編

2008/4/9 K-1MAX FINAL16 広島観戦記
というわけで、広島へ行って参りました〜。
うっかり駅の反対側のホテルを取ってしまい、グリーンアリーナまでテクシーで45分ほどかかってしまいました。しかも雨だし……。
だらだら歩いて、ようやく会場へ到着。前日に下見までしていたのに道を間違えそうになったことはないしょである……。

席は14列目ということで……なんだあ、SRSとはいえ最後尾じゃないか。これは詐欺ですよ! くそっ、イープラスめ! 去年の決勝の5列目というのは、いったいなんだったんだ? しかし角度的には超見やすかったので、まあよしとしようか。最後尾だから、後ろを気にせずに立てるしな……(明らかに負け惜しみ)。

▼オープニングファイト第1試合 K-1 WORLD YOUTH ルール 3分3R
瀧谷渉太(全日本新武道連盟 桜塾)
VS
ヴィッタリー・リスニアク(ウクライナ)

オープニング開始は5時半頃。はっきりいって「HIROYAなんか目じゃねえ」みたいなことを某所で読んでいたので、瀧谷にはちょいと期待してたんだが……。
なるほど、パンチとコンビネーションの切れはいいものの……首相撲につかまったらなす術なし〜! いや〜さすが新空手というと嫌みだが、K-1ルールだから相手に注意が入るものの、こりゃホームの全日本でやってたら逆に惨敗だべ? いとも容易く回されて転がされ……。
実質、単発のパンチと相手の警告だけで勝った感じ。相手のリスニアクも全然ルールにアジャストしてなかったが、実に等身大の内容だったなあ。


▼オープニングファイト第2試合 K-1ルール3分3R延長1R
山本優弥(日本/全日本キックボクシング連盟/青春塾)
VS
マルフィオ“ザ・ウォーリャータイガー”カノレッティ(ブラジル/シッチマスターロニー)

ヒゲそってなんか若返ってる感じのカノレッティ。しかしどうもキレがなく、左ミドルの切れる山本を捉えきれない。ディフェンスもブロック一辺倒なため、手数の多い山本を捌けず、単発のパンチも膝もがっちりブロックされる。う〜ん、やっぱりピークを過ぎてるのかな。
突破口を見いだすほどの攻撃力はなく、山本が圧倒的な手数で判定勝利。まあ悪くはなかったが、これもオープニングでちょうどいい内容。


ここから本戦。しかし客入りはいまいちだね〜。最終的にも8割ぐらいだったか? まあ地方だしこんなもんか。

▼第1試合 World Championship Tournament FINAL16 K-1ルール3分3R延長1R
ドラゴ(アルメニア/ショータイム/2006世界トーナメント第3位)
VS
GORI(USA/PUREBRED大阪)

ドラゴさんはおなじみダンスで入場。あまり手拍子はなかったけど、僕は頑張りました。すいませんね〜広島の客はノリ悪くて。
なにゆえここにいるのか相変わらず不明なGORIだが、パンチは結構重そうだ。しかしドラゴのブロックも堅く、左右の蹴りとフックで的を絞らせない。とはいえ、ちょっと堅いか緊張してるのか、スロースタート。1ラウンド終了前には左のパンチをねじ込み、ふらつかせる。
2ラウンド、危ない距離には入らず、GORIの一発には空を切らせるドラゴ。なんからしくないことをしてるなあ(笑)。ここらあたりから実力差は明確になり、手数が増える。
そして、3ラウンド、かかと落としやバックスピンも混ぜ、滅多打ち。GORIも根性はあったが、ボディをミドルで抉られ万事休す。試合終了間際に左のパンチで沈められた。

相変わらず力みまくってる感じのドラゴさんだが、今日は相手が相手でもあり危なげなし。まずは好発進というところか。


▼第2試合 World Championship Tournament FINAL16 K-1ルール3分3R延長1R
イム・チビン(韓国/KHAN/K-1 ASIA MAX 2008 IN SEOUL優勝)
VS
城戸康裕(日本/谷山/2008日本トーナメント優勝)

スピードと手数、ディフェンスに優れるチビンを弱点のローキックでどう崩すか……まあ素人の戦前予想なんて、所詮こんなもんだ。城戸のローにチビンのミドルの応酬、しかしほとんどその距離のまま突き上げた城戸の膝がチビンの顎を直撃! チビン立てず!

なんじゃあ!? マイク取った城戸も何言うか思いつかず「やべえ!」の連発。うーん、正直チビンが勝つと思ってたんだけど、一発の威力がすげえ。魔裟斗もコヒさんもここまで完璧な勝ち方はしてないしな。会場も騒然、これで2連続KOだしいい感じだ。


▼第3試合 World Championship Tournament FINAL16 K-1ルール3分3R延長1R
サロ・“ザ・シシリアンドン”・ブレスティ(イタリア/チームアーツ)
VS
ワレン・スティーブルマンズ(南アフリカ/ボス/K-1 EUROPE MAX 2008 IN HOLLAND優勝)

コネ出場のブレスティより、予選を勝ち抜いたスティーブルを心情的には応援。パンチ早くて手数勝負の選手かな?と思っていたが、序盤、手数ではややプレスティ。蹴りも交えて攻勢。うーん、まあ予選トーナメントを運にもめぐまれて制してもぽっと出の選手に負けてチャンスを失う……よくある話だなあ、といささか気が早く考えてたら、ラウンド終了間際、左フックがズバリ! プレスティダウン!
2ラウンド、スティーブルはストレート系もまじえ、ボディもヒットさせる。これがものすげえ音がしたんだよな。さらに飛び膝……角度が悪いと思ったら、相手の身体をよじ上るように二段飛び膝蹴り! ぐわっ、こりゃあ効いたなと思ったところに追い打ちを叩き込み、最後は棒立ちのボディに左フックが爆裂! プレスティ悶絶!

つ、つええ〜。ちょっと大きいザンビという感じと聞いていたが、一発もあるしコンビネーションも多彩で、これは本家より強いんじゃね?
何にせよ、これはまた面白いのが出てきたぜ。これで3連続KO!


▼第4試合 World Championship Tournament FINAL16 K-1ルール3分3R延長1R
アンディ・サワー(オランダ/シュートボクシング・オランダ/2005・2007世界トーナメント優勝)
VS
マイク・ザンビディス(ギリシャ/Zambidis Club/2004・2005・2007世界トーナメントベスト8)

裏メイン級。かならず噛み合うと言われてた好カード。スロースタートおよび、連戦でたまったダメージが心配、と言われるサワー。序盤がポイントか?
最初からプレッシャーをかけていくザンビ、おなじみ飛び込んでのフックを積極的に狙う。サワーはブロックも堅く、ローとミドルで止めにかかるが、ザンビは絶対に手を休めない。
2ラウンド以降、手数を増やしコンビネーションを華麗に決めるサワーだが、今日のザンビは気持ちが強く、プレッシャーを緩めず手数を出し続ける。しかしボディもブロックの上か? 効いている様子はない。3ラウンドも同じ展開が続き、両者とも見せ場は作れず、クリーンヒットではややサワーかな?と思ったのだが、手数ではザンビ。勝負は延長へ。
しかし「延長〜? めんどくせえなあ」と言わんばかりの余裕の表情のサワーに対し、ザンビはすでに荒い息を吐き出し、精魂尽き果てている様子。この時点で勝負はあったか。
手数を出し続ける両者。だが、終盤、力を使いきりガードの下がったザンビにサワーの左ハイが直撃! 一撃で決着!

うーん、一見もつれたように見えるが、実力差はありありだったなあ。サワーは今日も完璧で死角なし、ザンビは抵抗空しくというところか。
これで今日は4連続KO!


▼第5試合 K-1 WORLD YOUTH特別試合 60Kg契約 3分3R(延長戦なし)
HIROYA(フリー/2007年K-1甲子園 U-18日本一決定トーナメント準優勝)
VS
藤鬥嘩裟(藤/J-NETWORKフライ級王者)

契約体重は合わせてるんだが、やはりHIROYAの方がかなり大きく見える。全然厚みが違うぜ。
藤は前蹴り、HIROYAはパンチから前蹴りでも対抗。藤は飛び込んでのストレートも上手く当てるが、HIROYAは効いた様子はなし。これはKOはないな……。
もう一つ噛み合ないが、HIROYAのパンチの方が若干当たりそうな感じがあり、印象点はいいか? 3ラウンド、とうとうボディがめり込み、藤が苦しそうに後退。実質、判定もこれ一発で勝負あり。

うーん、ここまで全部KO決着で来てただけに、迫力の乏しかったこの試合の存在意義が問われるなあ。つまらんとも言い切らんけれど、これを大きく取り上げる必要性って……?

ここで休憩。今日は右隣は空席、左はリーマンらしき一人で来てる格オタ。いやあ、こりゃ最高の環境じゃね?
よそのブログもちらちら見てますが、はっはっは、今回は生観戦は少ないようですなあ。東京もんに一矢報いたようで、地方人としては今だけの優越感に浸るのである(笑)。
この日一番のオモシロシーンは、勝利者トロフィーをもらった直後、喜びのあまりトロフィーななめに抱えたまま、その場をぐるぐる回る城戸、その振り回されたトロフィーが当たりそうになったのを鮮やかなスウェーでかわしたレフェリーでした。放送でもちらっと映ってるな……経験者か?

席が最後尾ってことで、真後ろでは試合終わったセコンド、コーチなど関係者がお立ち見中。おっ、「滑らせろ!」の布施鋼治氏も来てるぞ(笑)。


▼第6試合 World Championship Tournament FINAL16 K-1ルール3分3R延長1R
佐藤嘉洋(フルキャスト/名古屋JKファクトリー/2006・2007日本トーナメント優勝)
VS
ムラット・ディレッキー(トルコ/ユニバーサル)

休憩後、最初の試合がこれということで、先のユースに続き会場を冷やしてしまわないか心配である。頼むぞ、ディレッキー! なんとか盛り上げてくれ!
しかしながら、1ラウンドこそ勢いがあったものの、中盤以降佐藤ペース。圧力が増し、ローキックもズバリと当たる。ディレッキーのパンチも当たってないわけではないが、見えてるから効いてない、という状態か。判定こそ1ポイント差だったものの、パワーアップ佐藤が押し込まれることなく完勝。

うーん、ディレッキーでもこうなってしまうのか。残念。来年に期待しよう。
佐藤は磐石で、いよいよ魔裟斗戦も視野に入ってきたか。会場は冷え冷え……でもないか。最近は彼も人気が出てきて、会場の暖かさに救われるようになってきた。


▼第7試合 World Championship Tournament FINAL16 K-1ルール3分3R延長1R
アルトゥール・キシェンコ(ウクライナ/キャプテンオデッサ/2007世界トーナメント第3位)
VS
ジョーダン・タイ(ニュージーランド/レイ・セフォーファイトアカデミー)

コネ出場は間違いないが、かといって噛ませと言い切れるほど弱い選手じゃないのもわかってるタイ。キシェンコにとってはやっかいな相手か? そうは言っても、ここで圧倒しないと先もないが……。
ちょっと慎重なキシェンコ、あまりバチバチにいかず、距離も遠い。ちょっと中途半端というか……パンチを警戒してるのか? 蹴りからパンチに行くが、顔面へのフックもボディブローもいまいち精度が低い。つうか空振りしすぎ。タイのコンビネーションも当たってないが、ちょっとひやっとするな。しかしキシェンコは左ハイをヒットさせ、技術的にはやはり「モノが違う」ことを見せつける。しかしまともにもらったはずのタイも、もらってからひと呼吸置いて腰が落ちたような動きを見せただけで、ダメージこそあるもののまだまだ余力あり、打たれ強さを見せる。後から思えば、これがこの試合を象徴するようなシーンであったな。
2ラウンド、お互いパンチは軽く当たるのみ、目先を変えるように出したキシェンコの膝蹴りがヒット。蹴りに交えて局面を打開するかに見えた一撃だったが、あまりに簡単に当たったことに気を良くしたか、さらに膝を連発したキシェンコのテンプルを、その膝をもらいながらもタイのフックが打ち抜いた。うーむ、当たってたのになんつうタフさかね。ダウンしたキシェンコはいささか足下が怪しく、ガードを固めて後退。しかし攻撃を浴びながらも持ち直したか、フックで反撃にかかる。
最終ラウンド、表情を不気味にぎらつかせたキシェンコが、ポイントを取りかえすべく猛攻に転じる。おなじみの上下フック殺法から、先ほども当てた膝、さらにロー、ミドル、ハイと打ち分け、ハイの一発は脚ごとからみつくようになったためにスリップと取られたが、ダウンでもおかしくないような当たり方。さらにバックブロー、バックスピンまで繰り出し、タイは防戦一方。しかしフックを返しながら粘り、倒れない。かなり当たってるんだが……。
判定に突入、万事休すかと思われたが、1、3ラウンドの優勢が支持されたか、首の皮1枚でつながったキシェンコ、延長に。
延長ラウンドでも猛攻撃が止まらない。タイはコーナーに詰められ滅多打ちに。倒れないのは反応できないほど早い攻撃がないせいか、それでも重い一発を受ける度に動きが止まる。
延長判定はキシェンコの完勝。

やれやれ、キシェンコは正直薄氷の勝利。技の多彩さに溺れ逆に単調になる部分、ディフェンスの甘さなど、課題も多いなあ。とはいえ、後半の地獄のコンビネーションには、改めて怪物性を見せつけられた感じだが……。口空いてる割にスタミナも切れる気配ないし……。


▼セミファイナル(第8試合) World Championship Tournament FINAL16 K-1ルール3分3R延長1R
ブアカーオ・ポー.プラムック(タイ/ポー.プラムック/2004・2006世界トーナメント優勝)
VS
アルバート・クラウス(オランダ/チーム・スーパープロ/2002世界トーナメント優勝)

いや〜、いやな試合だね。どっちも好きな選手だし、やっぱりこういう潰しあいってのは刺激的ではあるけれど、なんかすっきりしないものがあるよ。ここまで勝ちあがった選手自体に文句はないけど、やっぱり相手が相手だけになあ、GORIとかGORIとかGORIとか……。

ゴン格でも「オレにはパンチしかない!」「蹴りはジャッジに認めて貰えないんだ」みたいな戦い方をすると言われていたブアカーオ。今日は68.9キロ……オーバーワークじゃないの?(笑) 戦前から早くも黄信号が点灯、今日の作戦は……何が何でもミドル! 絶対に入らせん、とばかりに早いミドルを連発。おおおお〜これこれ。クラウスの前腕にびしびしと決まる。前蹴りは少ないが、これに高速ローも織りまぜ、クラウスに入らせない。単発のパンチはブロックし、コンビネーションも頭を振って凌ぐ。効いた素振りは見せないクラウスだが局面を打開できず。ブアカーオはパンチは崩した直後や回った際に右ストレートを狙うのみで、絶対に打ち合いにいかない。
2ラウンドも圧倒的な数の左ミドル……誰か数えて下さい……が飛び、クラウスは前進こそ続けるがクリーンヒットを奪えない。さらに離れ際のハイキックが幾度もブロックの上を掠める。クラウスもローを返して対抗するが、いささか的を絞れてない印象。
3ラウンド、ようやく疲れの見え始めたブアカーオに飛び込んでパンチを当てるが、これはクリンチで凌がれる。ダメージという程のダメージは両者にもないが、手数と試合のコントロールでブアカーオの完勝……と思ったが、判定は三者ともドロー。
おっとっと、誰か一人ぐらいは2ラウンドを取るかと思ったんだが……。やっぱり「蹴りはジャッジに認めて貰えないんだ」(涙)。
ここで発狂したブアカーオがパンチ勝負に出るかと思ったんだが、今日は「オレには左ミドルしかない!」とばかりにペースを変えない。クラウスのパンチも何度か当たるが、顎を上げるには至らずこちらもダメージを感じさせない。
延長も差がなかったが、ここでようやくブアカーオに1ポイント差が転げ込む。
微妙な判定だったが、本戦では1ポイント差をつけるほどの差はなく、延長でもそれは同じだったが、本戦の試合のリードでブアカーオ有利と取った。あるいは本戦では1ポイント差をつけるほどの差はなかったが、マストで取る延長ラウンドの場合、左ミドルによるわずかなリードを考慮した。どちらかかねえ。どっちにせよ、あの大量の左ミドルはもっと判定でも考慮すべきだろう。あれじゃあ蹴り損だよ(泣)。

個人的意見だが、やっぱり強い方に勝ち残って欲しいというのがあるんだよねえ。先のキシェンコもそうなんだが、他の内容で完全に圧倒してるのに、ダウン一個でイーブンにされてしまう。3ラウンド制での2ポイント差というものの重さと来たら大変なものなわけで。
ブアカーオもクラウスの持ち味を殺して何もさせず、手数でも大きく上回っているのにそれが評価されない。効いてないパンチのヒット数だけを取られて負けにされたらやってられんわなあ。
そういう意味では、今回の判定は結果だけは支持するが、その基準には考慮の余地ありだわなあ。とはいえだよ、これで判定に「上手さ」が重視されるような基準を取り入れるとますますマンネリ化し、番狂わせの要素は薄くなるだろうねえ。今でもただでさえ「3ラウンドの体力勝負」みたいなゲーム性のなさがあるわけだし……。

ひさびさの蹴りスタイル復活のブアカーオだが、安定感を示すと同時に(相手が王者級じゃなきゃもっと簡単に勝ってただろう)、このスタイルでは「勝たせてもらえない」現実も突き付けられてしまった。重い……重い一勝であった。果たして今後は?


▼メインイベント(第9試合) World Championship Tournament FINAL16 K-1ルール3分3R延長1R
魔裟斗(日本/シルバーウルフ/2003世界トーナメント優勝)
VS
ヴァージル・カラコダ(南アフリカ/ウォーリアーズ・ミックスマーシャルアーツ・アカデミー/元IBF世界ミドル級王者)

いや〜延長延長、見事に流れが止まってます。好試合には違いないんだが……。ここで出てくる魔裟斗さんにかかる期待はあまりにも大きい。しかしここまでわりと順当に来てるだけに、カラコダに期待する気分もちょっとあったりして……いやねえ、せっかく生観戦来てるんだから、「歴史」を目撃したい、という色気、わかってもらえますか!? 万全と思われたサワー、佐藤、魔裟斗の誰かがここで消えるという事態に、ちょっぴり期待してたんだが、他の二人は万全だった。さあ、魔裟斗さんは?
打ち合う宣言通りにコンビネーションで畳み掛ける魔裟斗、カラコダもジャブを突いて反撃に出るが、魔裟斗はボディやローへつなげ、運動量を落とさない。しかしカラコダも左フックを返し、クリーンヒットを狙う。
しかし2ラウンド以降も魔裟斗の攻勢は衰えず、着実に決まるコンビネーションにカラコダは手が出なくなる。常に魔裟斗が先手を取っているので、打ち終わりのフックぐらいしか攻め手がない現状。
まあでもタフだしこのまま判定かな……と思ってたのだが……。インターバルの時、赤コーナー側が良く見えたのだが、魔裟斗のコーチがしきりに「フック!」のジェスチャーをしてたんですよね。それこそ長島茂雄の「バントのサイン」ばりに……。これはカラコダ陣営にも丸見えじゃねえの、と思ったんだけれども……。
3ラウンド開始早々、魔裟斗さんの右フックがカラコダに直撃! カラコダはローを蹴り返そうとして、そのままばったり! VTR見たら身体がぐにゃんぐにゃんになって後頭部がリングでバウンドしてるよ! 辛うじて立ち上がるが完全に足にきており、角田さんがストップ。
つええ〜。予想もしなかったパンチで一撃決着したもんだから逆にポカーンというこの状況は、昨年のサワーVSローセンに似てるな。

うーん、ここでも見事な完勝劇、魔裟斗恐るべしですな。新必殺技として右の大砲を加え、いよいよサワーとも互角のところまで再び上がってきたか。不安要素はまったくないコンディション。さて、次戦はどうなるか?
試合後のマイクで、まさかの佐藤逆指名! いやあ、こりゃあ驚いたね。ストーカーじみてきた佐藤のラブコールだったが、実は魔裟斗さんも満更ではなかったのか……。「自分の足下を気にしたら」とツンツンだった魔裟斗さんがまさかのデレモード。どうせ受けてくれないんだろうけど……と半ば拗ね気味だった佐藤は、このドラマのような急展開に驚いたに違いない。
ドラマのよう……そう、これも魔裟斗さんの「演出」なんですよねえ。

閉会式、リングにあがって真っ先に魔裟斗に挨拶しにいく城戸が不気味だ。さて役者は揃い、

魔裟斗
ブアカーオ
サワー
佐藤
キシェンコ
ドラゴ
スティーブルマンズ
城戸

この8人が勝ち残り、組み合わせは抽選にゆだねられることに。昨年ベスト8から、潰し合いでザンビとクラウスが消されたが、他はきっちり生き残り。9位と10位を当てられた魔裟斗と佐藤も勝ち残り。やはりここらへんは安定感抜群ですな。抽選会については次の記事に。

しかし、結局終わったら10時だったよ。なんだかんだいって4時間興行か〜。根詰めすぎて頭痛い。ホテルへ帰って夜食食ってすぐに寝てしまいました。
でも、面白かったな。次のヘビー級も盛り上がるといいなあ。ぐうぐう……。

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雑談 過去ログ2

キックボクシングをやってて、ふと思ったこと。

会社では、私は変人かアホか、とにかく妙な人間と思われている(たぶん)。だから、私はヒマな時間にスーツ姿で堂々とシャドーをやっている。どうせおかしな奴と思われているのだから、いまさら何をしたって平気なのだ。会社の人間は、私がキックを始めたと聞いて当初は驚いていたが、そろそろシャドーも当たり前になったようである。
このあいだ、事務所でワンツーをしていたら、眼鏡をかけた上司がこう尋ねた。

「それで、誰に仕返しするの?」

いや、これはあくまでスポーツですから、と答えたが、ふと昔を思い出した。中学の時に同級生や上級生によく殴られたり蹴られたりした。あの時、私は格闘技好きでもなんでもなかったが、そういう奴らは空手やら柔道やらをやっていたものだ。ガキのすることとは言え、武道の精神が泣いている。当時の指導者は何を教えていたのか……いや、指導者の責任ももちろんあるだろうが、所詮は使う者の人間性の問題だろうか。あるいは親や教師の問題。
私の子供時代と言えば、『北斗の拳』や『キン肉マン』などが流行っていたものである。男の子は多かれ少なかれ、真似して遊んでいた。北斗神拳がどうこういって同級生を殴ったり、プロレス技でうっかり腕を折ってしまうなどということも多々あった。マンガに込められたヒーローたちの精神は、ガキにはまったく伝わらず、格闘技は弱いものいじめやせせこましい学校内の争いの道具、単なる暴力に成り下がっていた。
虚しい話だ。今の子供はどうなのだろう。『テニスの王子様』が好きなので、たまに少年ジャンプも見る。他のマンガをざっと見渡しても、あまり殴り合いは見当たらない。あるにはあるのだろうが、絶対数は減っているのかもしれない。そういうものが描きにくい世の中になっているのかもしれない。

だが格闘を題材にしたマンガは減っても、K−1やPRIDEがテレビでも放送され、格闘技はより身近になった感がある。魔裟斗や武蔵が、かつてのマンガのヒーローのような、偶像になる局面もあるのかもしれない。どこかの子供が魔裟斗の真似をして、自分より弱いものを殴りつける……。そんな馬鹿げたことが、やはり今でも繰り返されているのだろうか?
武道の精神。頂点を目指し自分の限界に挑戦し続けるスポーツ選手の精神。フィクションであるマンガはもちろんだが、テレビ放映もそれをないがしろにしてはいけないし、一キックボクサーとしての私も、それを忘れてはいけないなあ、と思うのである。
たとえば、将来、私に子供ができて、キックボクシングを習わせたとしよう。その子供が学校で自分より弱いよその子供の、膝の上の筋肉のないあたりをローで蹴りまくったとしたらどうだろう。正直、ぞっとする。それはスポーツの精神に反し、格闘技を冒涜するものであり、キックボクサーとしての私の恥であり、親としての私の敗北である。
肝に銘じておきたいところだ。


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